2025/06/14
梅雨・台風シーズンの不安緩和 東海道新幹線で基準変更 見合わせの回数や時間減少へ
■JR東海が「土壌雨量」導入 運転規制する際の新たな指標
梅雨に入り、これから台風シーズンを迎える。雨への警戒が高まる中、移動の不安が少しだけ解消するかもしれない。JR東海は6月から、東海道新幹線の新たな運行ルールを導入している。これまでよりも運転見合わせの頻度や時間が減る見込みとなっている。
東海道新幹線のトイレは半分を女性専用に変更へ JR東海の方針に賛否両論
JR東海は6月1日から、雨によって東海道新幹線の運転を規制する際の指標に「土壌雨量」を設けた。これまでの「時雨量」や「連続降雨量」、「10分間雨量」から切り替えた形となる。
東海道新幹線では沿線に設置した59の雨量計の数値をもとにして、運転を規制するかどうか判断している。規制の指標に「土壌雨量」を導入したのは、地中に蓄積した水分量の状態をより正確に捉え、長時間降り続く雨によるリスクを評価しやすくする狙いがある。
背景にあるのは、24時間以上降り続く大雨の増加だ。従来の「連続降雨量」では降り始めからの影響を十分に反映しきれないケースがあったという。
今回採用される「土壌雨量」は、地中にどれだけ水が溜まっているかを計算する気象庁のモデルを活用する。59カ所の雨量計のデータをもとにリアルタイムで状況を把握することによって、「より長時間の降雨の影響を適切に評価できる」とJR東海は説明。リスクを見極めた上での運転見合わせや徐行といった判断が、これまで以上に的確になると期待されている。

東海道新幹線の規制指標に「土壌雨量」を導入
■過去5年間のケース 新基準なら運転見合わせの回数減少
もう1つの大きな変化が、「きめ細やかな規制」の実現だ。これまでのルールでは東京駅から新大阪駅まで全線一律の規制値を設けていたが、新たな「土壌雨量」基準では地形や過去の経験値に応じて雨量計ごとに異なる数値を設定。地域ごとの特性を反映させた運行判断が可能になる。
例えば、盛土や切土構造の多いエリア(東海道新幹線全体の約53%)は降雨の影響を受けやすく、これまでも土石流などのリスクが懸念されてきた。今回の制度変更で、こうした構造物に対しても「土壌雨量」を使ってより精緻なモニタリングが行えるようになる。新たな規制値を過去5年間に当てはめた場合、運転見合わせの回数や時間減る結果になったという。
JR東海は今後も「降雨時の線路設備のモニタリング」を進め、必要に応じて設備強化や規制値の見直しも検討していく構えだ。異常気象が“常態化”する時代。東海道新幹線はより柔軟かつ高精度な安全運行体制を整え、激しい気象変化の中でも信頼性の高い輸送サービスを目指している。
(SHIZUOKA Life編集部)