2025/10/20
知らずに撮影されているかも? 顔も服装も全身 新幹線の車内カメラで乗客を分析
■JR東海がAI実証 N700S車両の1、6、8号車が対象
東海道新幹線で、乗客の映像をAIで分析する実証実験を実施する。JR東海は車内に設置している防犯カメラの映像を活用し、乗客の年代や性別、利用目的(ビジネスや観光など)をAIで推定する検証を11月1日から始める。対象はN700S車両の1号車・6号車・8号車で、東京から新大阪の全区間で実施される。
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JR東海によると、取り組みは「お客様の利便性向上に向けた技術開発の一環」として行うもので、防犯カメラ映像をもとにAIが乗客の年代や性別、利用目的などを自動で推定できるかを検証する。具体的には、乗客の顔を含む全身画像を取得し、服装や持ち物などの特徴を抽出。その情報をもとにAIが属性を推定する仕組みだという。推定データには個人を特定できる情報は含まれないとしている。
データの解析は三菱電機に委託され、取得した映像・画像データは防犯目的と検証以外には使用せず、検証終了後は速やかに削除する。データの取り扱いはJR東海のプライバシーポリシーおよび委託契約に基づいて厳正に管理される。
今回の検証では、1号車・6号車・8号車の客室内防犯カメラが対象となる。JR東海は「上記号車を避けてご利用いただければ、本検証に使用されることはありません」と説明しており、撮影を避けたい場合は対象号車を避けて乗車することでAI分析の対象外となる。
ただし、撮影の停止ボタンや同意取得は行われないため、どの号車で実施しているのかを知らずに利用してしまうケースも想定される。SNS上では「知らないうちにAIに解析されるのでは」と懸念する声も出ており、今後の周知方法が注目される。

東海道新幹線でAI使った実証実験
■実証実験は11月1~14日まで データは検証後に削除
鉄道の車内カメラは、これまでも犯罪防止やトラブル対策として活用されてきた。特に東海道新幹線では、2018年の無差別殺傷事件をきっかけにカメラ設置を進めた経緯がある。一方、今回は防犯目的にとどまらず、乗客の属性推定まで踏み込む取り組みであり、AIカメラの活用が進む中で「防犯」と「監視」の境界をめぐる議論が再燃しそうだ。
AI技術の導入は、混雑予測や乗降データの分析など快適な移動環境づくりに役立つ可能性を秘めている。一方で、公共交通機関という誰もが利用する空間で、どこまで情報を取得し、どのように活用するのか。ルールづくりと説明責任が求められている。利便性向上とプライバシー保護をどう両立させるのか。日本の大動脈・新幹線を舞台に、AI社会のあり方を問う実証が始まろうとしている。
JR東海は今回の実証について「取得したお客様のデータは防犯上の目的と本検証にのみ使用し、厳正に管理のうえ、検証終了後に削除します」としている。期間は11月1日から14日まで。問い合わせは「JR東海サービス相談室(050-3772-3910)」で受け付けている。
(SHIZUOKA Life編集部)