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2025/12/11

静岡県から日帰りOK 船で20分“近場の離島” 昭和の世界でアート・絶景・グルメ満喫

佐久島にある数々のアート作品

■愛知県西尾市「佐久島」 島内各所にアート作品

静岡県からも車と船で日帰り圏内に人気の離島がある。愛知県西尾市の「佐久島(さくしま)」。アートと自然、海鮮グルメを楽しめる“近場の離島旅スポット”となっている。

 

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知多半島と渥美半島に抱かれた三河湾のほぼ中央に位置し、一色港から定期船で約20分。人口200人ほどの佐久島は、自転車で2時間走ると一周できる大きさだ。島内には信号機もコンビニもなく、昭和の面影が残る集落や里山を含む豊かな自然が広がる。

 

海岸線の長さは約11.4キロメートルで三河湾国定公園内にあるため景観も美しい。海洋性気候の影響で暖地性植物も多いため、南の島の雰囲気を感じられるのも特徴だ。

 

佐久島は1996年からアートによる島おこしを進め、現在は島内一円に常設アート作品が点在している。訪れた人がスタンプラリーを楽しめる「アートピクニック」が通年で実施されているほか、様々なアートイベントも随時開催されている。

佐久島までは定期船で20分

■多数の写真スポット のんびり散策もおすすめ

代表作として知られるのが、真っ黒な外観で海を額縁のように切り取る「おひるねハウス」。潮風による家屋の腐食を防ぐためにコールタールを塗ってきた西集落の黒壁をモチーフにした作品で、中に入って横になり、波の音や潮風を感じながらくつろぐことができる。

 

対岸の桟橋上に立つ「イーストハウス」も、佐久島アートを代表する作品として親しまれている。海の真ん中を歩いているように感じられる桟橋と、海と空に映える白い東屋のコントラストが印象的で、長い白いベンチがバージンロードのようにも見えることから、写真撮影スポットとしても人気が高い。

 

この他にも、森に溶け込んだ鉄のアート作品「空の水―山」、風見鶏のように風に合わせてクルクル向きを変える60羽のカモメのオブジェ「カモメの駐車場」、木のトンネルを抜けた先に現れる「佐久島の秘密基地/アポロ」など、自然と調和した作品が島全体に散りばめられている。

 

島の80%以上は里山で、四季折々の野花が咲き、緑の草木が茂る。もちろん海辺の動植物も豊富で、野鳥や里山に棲む生き物たちの宝庫でもある。舗装されていない道も多く、のんびりとネイチャー散策を楽しめるのが魅力だ。

 

西地区にある黒壁集落は「三河湾の黒真珠」と称される印象的な景観で、迷路のように入り組んだ細い路地の両側に黒く塗られた家屋が並ぶ。島の地層からは縄文土器の破片や弥生時代の貝塚、さまざまな様式の弥生式土器も出土しており、古くから人が暮らしてきた歴史の面影をたどることもできる。

島内の黒壁集落も見所

■アサリやタコが名物 個性豊かなカフェも

かつて海運業で栄え、戦後は漁業を主な産業としてきた佐久島。アサリやタコ、カキやナマコなどの魚介類に加えて、根魚も新鮮でおいしい。大アサリ丼やタコしゃぶなど名物料理も多く、島の気候と豊かな土壌を生かした野菜も「オイシイ島グルメ」を支えている。

 

島内には、海辺の景色になじむカフェや古民家を活用した飲食店も点在する。ふわふわ食感のかき氷が名物の「サクカフェ aohana」、タピオカドリンク専門店兼みやげ物店として知られる「島の駅さくしま」、天使の羽アートが目を引く「カフェ うる」など、アート巡りと合わせて“カフェタイム”を楽しむことができる。

 

島内の車両は軽自動車が中心で台数も少ない。多くの島民が自給用に畑で野菜を育てている。一方で、島の中央部には小・中学校や市営診療所、西尾警察署佐久島駐在所などの公共機関も整備されている。

 

インフラの整った本土ほど暮らしは便利ではないが、穏やかな海と豊かな自然に囲まれ、静かでゆったりとした時間が流れている。弁天さんや弘法さんなどをお祀りして日々感謝する風習も今も息づいており、観光客も弘法様の祠(ほこら)に立ち寄りながら、島の文化に触れることができる。

 

■島への船は1日7便 港近くには海鮮市場

佐久島の玄関口となる一色港には、佐久島行きの船が1日に7本運航している。港近くの「佐久島ナビステーション」には、建築家・長岡勉さんによるアート作品「知識の蜂の巣」があり、島の文化やアートを紹介するギャラリーとしても機能。本土側からすでに“佐久島アート”の世界観に触れられる。

 

港の近くにある「一色さかな広場」は、一色漁港で水揚げされた魚介類や、うなぎ、えびせんべい、果物など西尾市一色町の特産品が並ぶ海鮮市場。市場の営業時間は17時までのため、立ち寄りたい場合は島からの帰りの船便を逆算しながら佐久島巡りのスケジュールを組むのがおすすめだ。

 

静かな島の暮らしと、アートに彩られた独特の景観、そして豊かな海の幸。静岡県民にとっても、気軽に“非日常”を味わえる近場の離島として、佐久島は新たな旅先となりそうだ。

自転車2時間ほどで島を一周

【佐久島日帰り観光モデルプラン】

(1)午前:一色港から佐久島・西港へ
・一色港から定期船で約20分の船旅
・西港到着後は、徒歩またはレンタサイクルで島巡りをスタート

 

(2)午前〜昼:西エリアで“アート×海”を満喫
・西集落の黒壁の家並みを眺めながら散策
・「おひるねハウス」で額縁構図の写真撮影
・「カフェ うる」で天使の羽アートとスイーツを楽しむ

 

(3)午後前半:弘法様の祠と「空の水―山」を巡る
・島内の参道に並ぶ祠を見ながら散策
・森に佇む鉄のアート作品「空の水―山」で静かな時間を過ごす

 

(4)午後:海水浴場と“ふわふわかき氷”のカフェへ
・「大浦海水浴場」でアート作品「カモメの駐車場」を見学
・「サクカフェ aohana」で金魚鉢かき氷などを味わい休憩

 

(5)午後〜夕方:島の南端と東エリアへ
・木のトンネルの先にある「佐久島の秘密基地/アポロ」で三河湾を一望
・海を切り取る窓から渥美半島や神島方面を眺める

 

(6)夕方:桟橋のアート「イーストハウス」と帰路へ
・白い東屋と桟橋で撮影し、東港から帰りの船に乗船

 

(7)夕方〜夜:一色港周辺で締めくくり
・営業時間内であれば「一色さかな広場」で海産物や特産品を購入
・その後、静岡県内の自宅へ向けて出発

 

(鈴木 梨沙/Risa Suzuki

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