2026/02/08
人材不足の倒産4割増加で過去最多 賃上げ要求強まる春闘 倒産加速のリスク指摘も
■2025年の「従業員退職型」倒産124件 90件増加で初の100件超
「人手不足」が、企業の存続そのものを揺るがしている。従業員の退職をきっかけに事業継続が困難となる「従業員退職型」の倒産は、過去最多を更新した。先日、闘争開始が宣言された春闘では、静岡県も含めて全国で賃上げが掲げられている。一方、その動きが人手不足や企業倒産を加速させるリスクも指摘されている。
なぜ黒字なのに廃業? ”静かな退場”が過去10年で2番目の多さ
民間の調査会社・帝国データバンクの調査によると、2025年に判明した人手不足倒産のうち、従業員や経営幹部の退職が直接・間接的に影響した「従業員退職型」の倒産は124件に上った。前年の90件から約4割増加し、集計可能な2013年以降で初めて100件を超えた。
業種別で最も多かったのは建設業(37件)で、全体の約3割を占めた。現場作業員や営業担当など、業務に不可欠な人材が相次いで退職し、事業運営が立ち行かなくなるケースが目立った。次いで老人福祉施設やIT産業、美容室などを含むサービス業(29件)、さらに製造業(21件)も初めて20件を超え、過去最多となった。
具体的な事例では、システム受託開発を手がけていた企業が従業員の退職によって受注能力が低下。外注で補った結果、コスト増加が資金繰りを圧迫し、倒産に至ったケースも確認されている。また、業績悪化を理由に給与を引き下げたことで退職が相次ぎ、事業継続が困難となった企業もあった。
■半数以上の企業で人手不足 賃上げ求める春闘“逆風”のリスク
背景には、依然として高水準にある人手不足がある。帝国データバンクの別調査では、正社員の人手不足を感じている企業は51.6%に達しており、特に建設業や情報サービス業など、「従業員退職型」の倒産が多い業界で割合が高かった。
転職市場が活発化するなか、賃上げや福利厚生の改善によって人材確保を進める企業がある一方、業績悪化などを理由に賃上げできない中小企業も少なくない。待遇改善ができないことによる人材流出リスクが高まり、「従業員退職型」の倒産は今後も高水準で推移する可能性があるとされている。
この動きに拍車をかける可能性があるのが、2月5日に闘争開始が宣言された2026年春闘だ。労働組合の中央組織・連合は全体で5%以上、中小企業では6%以上の賃上げ要求を掲げた。静岡県でも5%以上の賃上げを経営者団体に求めている。
賃上げは労働者にとってメリットがある一方、経営をひっ迫する要因になり得る面もある。静岡県内の経営者からは「従業員の給料を5%以上も増やしたら資金繰りができずに倒産する可能性が高い」、「中小企業は簡単に賃上げできない。賃上げできる大手に若い人材が流れて、中小企業は人手不足に陥る」など悲痛な声も上がる。
過去最多を更新した「従業員退職型」の倒産件数は、人材獲得における企業間格差が広がっている現状を映し出している。春闘で賃上げが求められる一方、その動きが企業の存続を脅かす可能性もある。そうなれば、働く場を失う労働者の増加にもつながりかねない。
(SHIZUOKA Life編集部)









