2026/04/02
“圧倒的な強さ”はなくても日本一 大阪桐蔭センバツ優勝のワケ 元主将が見た「仕掛け」
圧倒的な強さではなくても、最終的には頂点に立ちました。静岡ライフで連載している大阪桐蔭高校野球部元主将・水本弦さんのコラム、今回のテーマは選抜高校野球大会で10回目の優勝を果たした母校の分析です。日本一を成し遂げた要因に、水本さんは「仕掛け」の復活を挙げています。
甲子園春夏連覇を達成 大阪桐蔭の元主将・水本弦さんが振り返る”地獄の夏練習”
■春夏合わせて10回目の日本一 打線には「物足りなさ」
選抜高校野球大会は大阪桐蔭が優勝しました。春夏合わせて10回目の甲子園優勝です。去年は春夏ともに甲子園出場を逃し、OBとして寂しさもあっただけに喜びも大きいです。
今大会は圧倒的な強さというより、接戦をものにする粘り強さが印象的でした。あえて辛口に評価すると、打線に物足りなさを感じました。春先なので、寒さや実戦不足など、これから伸びていく部分はあると思います。そうした点を考慮した上で、スイングの力強さや迫力を感じませんでした。
強い時の大阪桐蔭は3点、4点取られても、いつでも取り返せる雰囲気があります。今回は相手に先制されると、かなり苦しくなる印象を受けました。体つきも全体的に、まだ線が細いです。
それでも、日本一になったのは明るい材料です。1点差ゲームに競り勝ち、敗戦を覚悟する試合展開でも勝ちを拾っていました。勝負強さに期待を感じさせました。追い込まれた経験をすると、次の試合で先制されても慌てることがなくなります。チーム力を上げるには、苦しい試合を経験した方が良いと思っています。

大阪桐蔭の優勝で閉幕したセンバツ
■積極的な「仕掛け」復活 精度は課題
今大会で大阪桐蔭の攻撃に感じた変化もありました。それは、「仕掛け」です。初戦から、エンドランを積極的に使っていました。ここ数年、大阪桐蔭は走者を動かす攻撃が極端に減ったと感じていました。そして、私はXやYouTubeで度々、「もっとエンドランを使った方が良い」と発信していました。「発信した内容を西谷先生が参考にしたのかな」と思うくらい、今春のセンバツでは動いていましたね。上手くいかなくても、何度も何度も仕掛けていました。
打力が強くないチームは、連打で得点できる確率が高くありません。エンドランを使えば、内野ゴロが安打になる可能性もあります。二遊間の選手がベースに入るために一歩、二歩動いたり、体重移動したりしただけで、安打のゾーンは広がります。エンドランのサインが出ると、打者はどんな球でもスイングするため、迷わずにバットを振れる利点もあります。
積極的に仕掛けることで、相手チームに考えさせる効果もあります。試合序盤にエンドランをかけると、当然ながらバッテリーは警戒します。その結果、制球を乱したり、配球に偏りが出たり、様々な形でプレッシャーをかけられるわけです。エンドランは成功すればチャンスが拡大し、相手にイメージを植え付けるだけでも優位に立てます。
ただ、大阪桐蔭打線のエンドランは現状では、まだまだ精度を上げていく必要があります。エンドランで避けなければいけないのは空振りとセンターラインへの打球です。今大会では、この2つが目立ちました。そこは、選手たちも認識しているはずです。私たちの頃から、チームでは普段からエンドランの練習を繰り返していました。甲子園で見えた課題を今後、改善していくと思います。

大阪桐蔭時代の水本さん(本人提供)
■川本投手ら投手陣に強み 夏につながるセンバツ優勝
投手陣は全体的に球が強いと感じました。中でも、背番号10の2年生左腕・川本晴大投手の球は簡単には打てないと思います。まだ粗さはありますが、身長190センチを超える長身は大きな武器です。
私も高校時代、チームメートの藤浪晋太郎投手や花巻東の大谷翔平投手相手に打席に立った経験があります。相手投手の身長が高いとマウンドまでの距離が近く感じ、覆いかぶさってくるような感覚になります。同じ150キロの球速でも、打撃マシンとは全く違います。
川本投手は、140キロ台の力のあるストレートに110キロ前後の落差の大きなカーブやスライダーを組み合わせる投球です。左打者は特に内角にストレートを見せられると、変化球に対応するのは難しくなります。
私たちが甲子園で春夏連覇を成し遂げた時、実はセンバツで苦戦続きでした。5試合中、3試合が逆転勝ち。残りの2試合も先制したものの、一度は追い付かれています。9回まで負けていた試合もありました。
優勝できるとは想像していなかった中、結果的に勝ち上がったことでチームに自信が生まれました。全体的に調子が上がっていなかったので、普段通りに戦えれば全国の舞台でも十分勝負できると前向きになれました。
今年の大阪桐蔭は3季ぶりの甲子園とあって、自分たちの力に半信半疑だったはずです。その中で、日本一になれたことは、夏にもつながっていくと思います。
<プロフィール>
水本弦(みずもと・げん)
1995年2月23日生まれ。石川県野々市市出身。小学2年生の時に野球を始め、中学時代は白山能美ボーイズで全国大会に出場した。大阪桐蔭高校では3年生で主将を務め、甲子園で春夏連覇を達成。亜細亜大学でも主将を任され、リーグ優勝5回、日本一2回。東邦ガスではけがに苦しみ、2021年に現役引退。2023年5月に「株式会社Ring Match」を設立。野球経験者に特化した人材紹介、野球塾の運営、バットの開発・販売、就労継続支援B型事業を手掛ける。








