2026/05/25
起業は若者だけじゃない? 平均年齢52歳、60代が急上昇 “会社の形”にも変化
■静岡県の新設法人2622社 6年連続で2500社以上
「定年後は、のんびり暮らす」。そんなシニアライフのイメージは、少しずつ変わり始めているのかもしれない。
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帝国データバンク静岡支店の調査によると、2025年に静岡県内で新たに設立された法人は2622社にだった。前年から0.6%減少したものの、依然として高い水準を維持している。2020年以降は6年連続で2500社を上回り、10年前の2015年と比べると、新設法人数は約1.23倍に増えている。
中でも目を引くのは、会社を立ち上げた人の年齢だ。新設時の代表者の平均年齢は52.0歳。前年の48.3歳から3.7歳上昇し、2000年以降で最も高くなった。
かつて「起業」と聞くと、20代や30代の若い世代がIT技術や新しいアイデアを武器に会社を立ち上げる姿を思い浮かべる人も多かったかもしれない。しかし、静岡県内の新設法人の動向からは、別の変化も見えてくる。
特に目立つのが60代だ。60代の割合は16.7%となり、前年の10.4%を大きく上回った。過去10年間で最も高い水準で、定年後や定年を意識する世代による起業が広がっている。起業は社会人経験を重ねた中高年世代にとっても、現実的な選択肢になりつつあるのだ。

写真はイメージ
■ネット普及も起業の追い風 合同会社が2000年以降で最多
背景には、働き方やキャリア観の変化があるとみられる。人生100年時代と言われるなか、50代や60代になっても働く意欲や体力を持つ人は少なくない。会社員として培ってきた経験や専門知識、人脈を生かし、退職後に小さく事業を始める。あるいは、会社に勤めながら副業や兼業を通じて準備を進める。そうした働き方が、以前よりも身近になっている。
インターネットの普及も、起業のハードルを下げている。大きな店舗や設備を持たなくても、情報発信や顧客とのやり取り、販売活動を始めやすくなった。地域密着のサービスや、これまでの仕事の延長線上にある専門分野の相談業務など、無理のない規模で事業を始める選択肢も広がっている。
起業は、必ずしも大きな会社を目指すものばかりではない。自分の経験を生かして、できる範囲で仕事を続ける。地域や取引先との関係を生かしながら、もう一度自分の名前で働く。県内の起業年齢が52.0歳まで上がったことは、そんな「第二のキャリア」の広がりを映しているともいえそうだ。
新しくつくる会社の形にも変化が出ている。法人格別では、最も多かったのは株式会社で1707社。前年の1739社を下回ったものの、依然として全体の約3分の2を占めている。一方で、合同会社は677社となり、前年から1.5%増加した。合同会社は2000年以降で最多を更新しており、株式会社と合同会社で全体の9割を超えた。
合同会社は、株式会社に比べて設立時の手続きや費用を抑えやすく、経営の自由度も比較的高いとされる。上場や大規模な事業拡大を前提にするのではなく、自分や少人数の仲間で始める事業に適している面がある。中高年世代が経験や専門性を生かして小さく起業する場合にも、選びやすい形の一つになっている可能性がある。
■最多は浜松市中央区の525社 政令市で県内の45%
地域別に見ると、県内で最も新設法人が多かったのは浜松市中央区で525社だった。前年の552社からは27社減ったものの、県内最多を維持した。次いで静岡市葵区が265社、富士市が184社、静岡市駿河区が159社、沼津市が156社、静岡市清水区が146社と続いた。
政令指定都市で見ると、浜松市は617社、静岡市は570社。2市で県内全体の45.27%を占めた。人口や事業所が集まる都市部に、新たな法人設立が集中している状況がうかがえる。
新設法人の増減は、地域経済の動きを映す指標の一つでもある。新しい会社が増えれば、雇用や取引の広がりにつながる可能性がある。一方で、事業を続けていくには資金繰りや人材確保、販路開拓などの課題も避けられない。会社設立はゴールではなく、その後にどう軌道に乗せるかが問われる。
一つの会社に勤め上げることだけが、人生後半の働き方ではなくなりつつある。若い世代だけでなく、経験を積んだ中高年世代も、地域経済の新たな担い手になっている。年齢を重ねたからこそ見える課題や、培ってきた知識、人とのつながりを生かす起業は、これからの静岡県内でも存在感を増していくかもしれない。
(SHIZUOKA Life編集部)








