2026/06/27
終盤のドラマは減るのか 熱中症対策の効果は? 甲子園春夏連覇の主将が語る「高校野球7イニング制」
高校野球は、本当に9回でなければならないのか。暑さ対策や部員数の減少を背景に、イニング数を7回に短縮する議論が進んでいる。静岡ライフで連載している大阪桐蔭高校野球部元主将・水本弦さんのコラム、今回のテーマは「高校野球の7イニング制」。水本さんは7イニング制自体を否定していないが、熱中症対策の効果には疑問を投げかける。9回だからこそ生まれると思われてきた終盤のドラマは減ってしまうのか。甲子園春夏連覇の経験者が、高校野球の“当たり前”を考える。
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■7割の高校が7回制に反対 導入の理由に疑問
高校野球のイニング数を現在の9回から7回に減らす議論が進んでいます。監督経験者や医師ら、野球に長年携わってきた関係者による意見交換会が今月も開催されました。
7イニング制を導入する目的には、厳しさを増す暑さ対策や部員数の減少などが挙げられています。一方、日本高校野球連盟が加盟校を対象にしたアンケートでは、7割の高校が7イニング制に反対しているそうです。部員数が多い高校ほど反対の割合は高く、「選手のプレー機会減少」が理由として多くなっています。他にも、終盤のドラマが減り、野球のおもしろさが失われる懸念の声もあります。
私の母校・大阪桐蔭高校の西谷浩一監督も、7イニング制に強く反対している1人です。報道によると、「一番暑い時間でも3イニングずつ休憩を取れば、熱中症の予防になる」、「7イニング制になると先発投手の球数が減り、連投をさせるチームが出てくるかもしれない。ようやく根付いてきた投手のけがの予防や複数投手制に逆行する」といった指摘をしています。
私は、7イニング制を導入する理由に疑問を感じています。最大の理由とされる熱中症対策として、イニング数の削減に大きな効果があるとは思えません。

暑さ対策の一環で7回制の導入が検討されている高校野球
■暑さが厳しいのは試合より練習 7回制は出場機会にも影響
野球は攻撃中、打者と走者以外、屋根のついたベンチに入っています。こまめに水分補給ができますし、5回終了時にはクーリングタイムも設けられています。特に、甲子園のベンチは涼しいので快適です。私が甲子園でプレーした14年前よりも今の方が暑さは厳しくなっていますが、当時は試合中に暑さを感じた記憶がありません。
高校野球の経験者であれば共感できると思いますが、暑さに関しては試合よりも圧倒的に練習の方がきついです。熱中症対策を本気で考えるのであれば、練習の仕方を見直した方が効果的です。
また、全ての試合でイニング数を減らすよりも、地方大会の3回戦までは7イニングにするなど、一部の試合で導入する方法も選択肢になると考えています。甲子園に出場する高校は暑い中でも、それなりの練習量をこなします。
一方、進学校や部員数が少ない高校の中には、練習時間が短いチームもあるかもしれません。普段の練習で日なたにいる時間が短い選手は、試合中の暑さが負担になる可能性はあります。
暑さ以外の面では、選手の出場機会を増やす動きに逆行するところも気になります。甲子園では、今春のセンバツからDH(指名打者)制が採用されました。近年変更となったベンチ入りメンバーの2人増員も含めて、より多くの選手がプレーする仕組みづくりが進んでいます。7イニング制になれば、出場する選手が減ると予想されます。

水本さんは3年生の時に甲子園で春夏連覇
■終盤のドラマは減る? 7回制でも劇的な展開を予想
他にも、高校野球が7イニングになると、選手たちが大学、社会人、プロに進んだ際、集中力や体力の面で課題が出てくるかもしれません。ただ、私は7イニング制自体に反対ではありません。イニング数を減らすことで高校野球の課題解決につながるのであれば、検討する意義は十分にあると思います。
また、「7イニング制になるとドラマが減る」という指摘は、必ずしも当てはまらないと感じます。たしかに、野球の試合は8回や9回に劇的な展開となる印象があります。
私も高校時代、終盤に逆転した試合が数多くありました。2012年のセンバツでは9回に試合をひっくり返した準々決勝の浦和学院戦をはじめ、ほとんどが終盤に大きく動く試合展開でした。
序盤でリードを許しても、西谷監督は「後半、後半」、「我慢していれば後半にチャンスがめぐってくる」と繰り返していました。平凡な内野ゴロでも序盤から全力疾走を続けていると、相手の内野手に「わずかなミスでも出塁を許してしまう」とプレッシャーをかけられます。そのイメージが、試合終盤での焦りにつながります。
これは9イニング制だから生まれるドラマというよりも、試合終盤の緊張感や研ぎ澄まされた集中力が要因だと思います。7イニング制になれば、6回や7回に劇的な展開を見られるのではないでしょうか。7イニング制だからこその戦い方やおもしろさも出てくるはずです。
「野球=9回」が長年続いてきたため、イニング数を減らすのは簡単ではないかもしれません。ただ、常識や当たり前に疑問を抱いたり、さらに良くなる方法を検討したりする動きは、高校野球の新たな魅力を見つけるきっかけになる可能性があると考えています。

現在は野球塾の運営も展開する水本さん(本人提供)
<プロフィール>
水本弦(みずもと・げん)
1995年2月23日生まれ。石川県野々市市出身。小学2年生の時に野球を始め、中学時代は白山能美ボーイズで全国大会に出場した。大阪桐蔭高校では3年生で主将を務め、甲子園で春夏連覇を達成。亜細亜大学でも主将を任され、リーグ優勝5回、日本一2回。東邦ガスではけがに苦しみ、2021年に現役引退。2023年5月に「株式会社Ring Match」を設立。野球経験者に特化した人材紹介、野球塾の運営、バットの開発・販売、就労継続支援B型事業を手掛ける。
(SHIZUOKA Life編集部)









