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2025/10/02

名物“いなり寿し”消える 創業79年の駅弁老舗「祇園」が廃業 地元や観光客に衝撃

■伊東市の「祇園」 10月1日に破産手続き開始

静岡県伊東市で長年親しまれてきた老舗弁当店「祇園」が10月1日、破産手続きに入った。1946年に創業し、看板商品の「いなり寿し」は伊東の名物として愛された。79年続いた老舗の幕引きに惜しむ声が相次いでいる。

 

「まさか、この店が…」 焼津市では52年間続いたスーパーが閉店

 

祇園は9月30日限りで全ての事業を終了し、10月1日に破産手続による会社清算を進めると公式ホームページで発表した。守谷匡司代表取締役の名前で以下のようにコメントしている。

 

「諸般の事情により、これ以上の事業継続は不可能であるという結論に至らざるを得なくなりました。このため、断腸の思いではございますが、2025年9月30日をもちまして、当社の全ての事業を廃止し、破産手続による会社の清算を図ることといたしました。関係ご各位様には多大なご迷惑をおかけすることとなりますが、諸事情ご賢察の上、何卒ご理解いただきたく、お詫び方々お知らせいたします。長年に渡るご愛顧に心より感謝申し上げます」

 

祇園は1946年、伊東温泉で寿司店としてスタートした。創業者の守谷定一氏が浅草の映画街で弁士をしていた戦後、妻の実家が稲荷神社だった縁から「いなり寿し」をつくり始めたという。甘めの味付けをした油揚げに寿し飯を詰めた“祇園寿し”は評判を呼び、1959年には国鉄(現・JR東日本)伊東駅の構内販売で「いなり寿し」が伊東で初めての駅弁となった。

 

駅弁の掛け紙を外し、ふたを開ける瞬間から「旅の物語が始まる」との思いで弁当をつくり続けてきた。公式ホームページでは「お腹を満たすだけではなく、こころも満たすもの…それが駅弁」と理念をつづっていた。しかし、高騰する原材料費やエネルギー価格の影響を受け、事業継続が難しい状況に追い込まれたという。先月28日には地元の社会人サッカークラブ「SS伊豆」の選手たちに、いなり寿しを無料で提供していただけに地元からは驚きの声も上がっている。

祇園の看板「いなり寿し」(公式HPより)

■伊東市内に4店舗 地元や観光客から閉店惜しむ声

祇園は伊東市広野にある本店をはじめ、伊東駅、道の駅「伊東マリンタウン」、伊東ショッピングプラザ「デュオ」と市内で計4店舗を展開していた。地元の人たちに加えて、観光客にもファンが多かっただけに、閉店を惜しむ声が広がっている。インターネット上では次のようなコメントが寄せられている。

 

「伊東に行く際、祇園のいなり寿しを楽しみにしていた。ただ、駅弁の時代は終わったのかもしれない。祇園の閉店は、時代を象徴している」

 

「いなり寿しもおいしかったけど、赤飯おにぎり弁当が好きだった。おにぎりも付け合わせの唐揚げも大きくて、食べ応えのある弁当だった」

 

「地元のソウルフードだったのに、なくなってしまうのは残念。買いに行くと売り切れの時もあったので、まさか閉店するとは思わなかった」

 

「スーパーやチェーン店で安く食事を済ませられる時代に、1000円前後の弁当を販売する店が生き残るのは大変なんだろう。歴史や個性のある店が閉店するのは惜しい」

 

祇園は「断腸の思い」で約80年の歴史に幕を下ろした。今後は代理人弁護士に委託して、破産手続きを進めていく。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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