2025/10/05
虚偽説明?情報共有不足? 静岡県の危機管理に不安と批判 自衛隊派遣要請で発言撤回
■過去最大級の竜巻から1カ月 県は自衛隊が派遣見送りと説明
“危機管理”の名前に偽りはないのか。静岡県民の不安や批判が高まっている。台風15号に伴う過去最大級の竜巻をめぐり、「自衛隊が派遣の見送りを判断した」と説明していた静岡県が発言を撤回した。実際は、県が派遣要請をしていなかったという。
過去最大級の竜巻発生から1カ月が経った。甚大な被害を受けた牧之原市では今も日常が戻っていない地域もある。
この竜巻の初動対応で、信じられない事実が発覚した。静岡県は当初、牧之原市からの要請を受けて自衛隊に災害派遣を打診したものの、自衛隊が派遣を見送ったと説明していた。鈴木康友知事は9月30日、定例記者会見で次のように述べている。
「自衛隊としては今回の案件については派遣の要件を満たさないということで、派遣をしないという方針でした」
自衛隊は緊急性、公共性、非代替性と3つの要件から派遣するかどうかを総合的に判断する。県は「3要件に合致せず出動できない」と繰り返し回答していた。

自衛隊の派遣要請に関する発言を撤回した静岡県
■自衛隊の反論に県が発言撤回と謝罪 県民から相次ぐ批判
ところが、自衛隊側は県から正式な派遣要請は受けていないと反論した。陸上自衛隊は「自治体等により対応が可能であると県と認識共有がなされたことから、災害要請が発出されなかったと承知しています」と説明した。この発言を受け、県は自衛隊に派遣を断られたという見解を撤回した。危機管理部のトップは10月3日、こう説明した。
「改めて内部で確認したところ、自衛隊との調整の中で県から自衛隊に対して、今回の事案については非代替性に欠けるということを述べていたことが判明しました。組織の中での意思疎通がしっかりとできていなかったことを反省しています」
県危機管理部の担当者は陸上自衛隊と電話で事前調整を行った際、「自衛隊を派遣せずに代替は可能」と意見交換したという。つまり、派遣要請をしたとの説明は“虚偽”とも受け取られ、自衛隊に責任転嫁していたと見られかねない。この県の対応について、県民からは厳しい声が上がる。
「本当に言葉通り、この程度の意思疎通が組織内でできていないのであれば、県の危機管理部に災害対応を任せるのは不安すぎる。普段は一体、どんな仕事をしているのか」
「3年前の台風15号で静岡市清水区の対応が後手後手に回ったのは当時の知事と市長の問題だと思っていたが、今回の事態を見ると県の災害対策自体に欠陥があると感じる。危機管理部の危機管理が全くなっていない」
「自分たちの能力のなさを自衛隊のせいにしたとしか思えない対応。意思疎通の不足ではなく、責任感の欠如が問題」
東海地震のリスクを長年指摘されてきた静岡県は、“防災県”をうたっている。ただ、県が災害時に強さを発揮すると実感している県民は少ないかもしれない。
(SHIZUOKA Life編集部)