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2025/12/07

唐揚げ専門店の倒産が2年で半減 生き残った店に共通する「勝ち残りの法則」とは

■唐揚げ専門店の倒産 今年1~11月は12件

唐揚げ専門店の生き残り策が鮮明になっている。かつて各地で新規出店が相次いだ“唐揚げブーム”は落ち着き、市場からの退出が増えていたが、今年に入って倒産件数は明らかに減少している。背景には、これまでとは異なる「勝ち残りの法則」が全国で共通して見え始めており、競争から抜け出した店と撤退を余儀なくされた店との差がはっきり表れつつある。

 

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子どもから大人まで根強い人気を誇る唐揚げ。民間調査会社・帝国データバンクによると、今年1月から11月に倒産した唐揚げ専門店は12件だった。昨年の16件から減少し、過去最多だったおととしの27件からは半減。倒産が“増えている”印象とは逆で、実際には生き残りの店が増えていることが数字から明らかになった。

 

急速に参入が広がった近年の唐揚げ市場は、コロナ禍の持ち帰り需要が追い風となって一気に個人店から大手チェーンまで参入が増え、“レッドオーシャン”へと変貌した。競争が激しくなる中、鶏肉や食用油の高騰、スタッフの人件費や光熱費の上昇が重なり、「低コストで利益が出やすい」とされていた従来のビジネスモデルは大きく揺らいだ。静岡県内でもコロナ収束以降、行列ができていた店が突然閉店するケースがみられ、ブームの明暗が地元の街にも表れていた。

 

スーパーは唐揚げを主力惣菜として強化する動きを見せ、消費者には物価高で節約志向が高まっている。専門店が100グラムを200円台に値上げした途端に売れ行きが鈍るケースもあり、価格の“ライン”がシビアになっていることがうかがえる。

写真はイメージ

■小容量や配合の微調整 リピーター増やす店に共通点

こうした環境下でも生き残り、むしろリピーターを増やしている店には共通点があるという。例えば、小容量サイズを増やして“買いやすさ”を高めたり、ムネ肉とモモ肉の配合を微調整して食べ応えを強化したり、揚げ時間や衣の配合を見直して「値上げしても満足できる味」を追求する動きが目立つ。

 

さらに、SNSで調理工程やこだわりを動画で発信し、「この店で買いたい」というファンを増やすことに成功している店も多い。味の魅力や店主のストーリーを前面に出した投稿が広まり、結果として固定客の定着につながっている。

 

固定客やリピーターをつなぎ止める力が強い店は、納得感のある値上げに踏み切っても大きな客離れは見られず、安定した集客を維持している。また、不採算店を早期に整理し、出店場所を厳選するなど、かつての“攻めの出店”から慎重な経営へ転換したチェーンも増えている。急拡大と急縮小を繰り返した唐揚げ市場は今、急成長期とは異なる“選ばれる時代”に入った。

 

単なるブームではなく、「本当においしい店」や「こだわりが伝わる店」が支持される段階へ移行したことで、倒産の波を乗り越える店が増えた。人気メニューとしての存在感は揺るがないだけに、今後は食品スーパーとの価格競争をどう乗り越えられるか、専門店ならではの価値をどこまで打ち出せるかが鍵を握る。唐揚げ市場の次の主役を決めるのは、リピーターから選ばれる“強い店づくり”になりそうだ。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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