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2026/01/03

日本のラムネを世界へ 10年の挑戦が切り開いた海外市場 地方メーカーの転機

台湾で開催された展示会に参加(木村飲料提供)

■展示会の反応が売上につながらず… 10年間続いた“下積み”

日の目を見るまでの歳月は予想以上に長かった。だが、貫いた信念が間違っていなかったと証明された。静岡県島田市に本社を置く飲料メーカー「木村飲料」は、約10年間の“下積み”期間を経て、海外展開に成功した。昔ながらのラムネやサイダーは今、米国やEU、アジアなど世界中で愛されている。

 

【写真で見る】木村飲料は”変わり種”商品でヒット連発 カレーもワサビもラムネに

 

実は、すぐに海外でも成功すると確信していた。今から20年以上前の2003年、木村飲料の木村英文社長はドイツで開催された世界最大級の展示会「Anuga」に初めて参加した。出展した各国のメーカーが自慢の飲料を披露する中、木村飲料はラムネ、缶ジュース、アルコールなどを並べた。

 

圧倒的に関心を集めたのがラムネだった。日本独自のラムネは、ビー玉栓を押す時の「ポンッ!」という音や吹き出す泡、瓶の中に入ったビー玉が海外にはない目新しさがあった。木村飲料のブースには人だかりが絶えなかったという。木村社長は「飲ませて、飲ませてと次々に人が来ました。手が真っ赤になるくらい、ラムネの栓を開け続けましたね」と振り返る。

 

1947年に創業した木村飲料は国内で順調に売上を伸ばし、海外への事業展開を見据えていた。初めての展示会で手応えを得た木村社長は「ラムネは世界に通じると思いました。ラムネの伝道師になることを自分のミッションに掲げ、その後は大きな展示会を総なめにするくらい回りました」と語る。ところが展示会の反応が、商品の売上につながらない。

 

「展示会での反応が非常に良かったので、期待が先走った部分もありました。興味を持っていただくことと、実際に取引に至ることは別だと気付かされました」

展示会で並べられた木村飲料の商品(木村飲料提供)

■和食への注目が転機 日本のラムネは10年で4倍

それでも、木村社長は海外展開をあきらめなかった。「必ず火が付く時が来る」。そう信じて、海外での営業活動を続けた。

 

フランスやイタリア、ドバイにブラジル、米国に中国など、木村社長はチャンスを得るため海外を飛び回った。苦節10年。ようやく追い風が吹く。2013年12月、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたのだ。日本の食文化が海外から注目され、ラムネの認知度や関心も一気に高まった。木村社長は「ラムネへの見方が明らかに変わりました。伸び悩んでいた海外での売上が大幅な上昇に転じました」と説明する。

 

日本ガラスびん協会の調査によると、昨年のラムネの売上本数は1億4000万本だった。和食が無形文化遺産に登録された10年前から4倍に増えている。海外のラムネ需要が高まり、木村飲料も輸出が9割を占めているという。中でも、米国やヨーロッパでの人気が高い。サイダーは中国、台湾、香港で伸びている。

 

必ず世界で評価されて、ラムネの時代が訪れる――。想定よりも時間はかかったが、木村飲料の信念と努力は実を結んだ。

 

(間 淳/Jun Aida

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