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2026/01/04

なぜ割れやすいガラス瓶? コンビニを選ばない創業78年の飲料メーカー 弱者から勝者に

お土産の需要も高い木村飲料の商品(木村飲料提供)

■従業員60人の木村飲料 大手にできない戦略で成功

原材料費や人件費の高騰は、中小企業には強い逆風となり得る。しかし、中小企業だからこその戦い方もある。静岡県島田市の飲料メーカー「木村飲料」は、大手にはできない戦略で売上を伸ばしている。厳しい競争にも生き残り、成長を続けられる企業には理由がある。

 

【写真で見る】ワサビやウナギも炭酸飲料に 個性豊かな木村飲料の商品

 

大手企業と比べて資本や人員で劣る中小企業は、同じ戦い方をしても歯が立たない。従業員数60人ほどの木村飲料も例外ではない。規模の大きな企業にはできない“弱者の戦略”で、飲料業界を生き抜いてきた。

 

戦略の1つは「販売先」だ。一般的な大手飲料はスーパーやコンビニエンスストア、自動販売機など様々な場所で購入できる。それに対し、木村飲料は販売先を絞っている。木村英文社長は、こう話す。

 

「当初はスーパーやコンビニなど幅広い売場での展開を視野に入れていました。しかし、大手さんにはない自社の強みをより発揮する方法を模索する中で、方針を整理していきました」

創業当時の工場の様子(木村飲料提供)

■土産店やホテルの売店 商品のストーリー生かせる売場に特化

木村飲料と大手メーカーが幅広く展開するスーパーやコンビニではスタイルが異なる。価格や販促の柔軟性を特徴とするスーパーやコンビニに対して、木村飲料は商品の地域性や企画性に重きを置き。その価値をそのまま伝えることを大切にしている。そのため、定価での販売を基本としている。いずれかに優劣があるのではなく、木村社長は求められる役割の違いを感じていた。

 

「当社の商品を選んでくださるお店に安心して販売していただけるように、スーパーさん向けの商品はラベルを変えるなどの工夫もしましたが、最終的には当社の特徴がより生かせる売り場に注力することにしました」

 

木村飲料の商品は現在、土産物店やサービスエリア、ホテルの売店など、商品のストーリーや地域性をしっかりと伝えられる売り場に特化して展開している。お茶、ミカン、マスクメロン、イチゴといった静岡県産の素材を生かしたラインアップは、こうした売り場との相性も良く、取扱店にも喜ばれていると木村社長は話す。

 

「静岡県外から来た方々にお土産として買ってもらう戦略が成功しています。商品が話題になることで、お店の皆さまにも喜んでいただけるのは、私たちにとっても大きな励みです」

 

木村飲料の商品は、日常的に手に取れる売り場ではあまり見かけない。そのため、“特別感”のあるアイテムとして受け取られ、ブランドの独自性を高める一因にもなっている。

ヒット商品「カレーパンサイダー」(木村飲料提供)

■割れやすく高コストのガラス瓶 デメリットも強みに

木村飲料の代名詞ともなっている「ガラス瓶」も、中小企業だからこその戦い方となっている。かつては自社製品も多くがペットボトルだったが、今は数を大幅に減らしている。木村飲料のペットボトル商品は賞味期限が最長でも10カ月で、ガラス瓶の2年よりも短い。さらに、炭酸が抜けやすい弱点もある。木村社長が言う。

 

「ガラス瓶の方が仕入や輸送のコストはかかりますが、賞味期限や炭酸ガスの強さを長く保てるため、販売チャンスを長く持てると考えました。また、海外市場、特に欧州では環境保護の視点からガラス瓶が好まれる傾向にあります。そういった状況を踏まえて、会社としてガラス瓶に注力することを決めました」

 

大手メーカーは全国規模で大量配送するため、効率性や取り扱いやすさを重視した容器選びが求められる。その結果、ガラス瓶は取り扱いが限られる傾向にある。

 

一方、ガラス瓶は「特別感」や「レトロな雰囲気」を演出できることから、木村飲料では自社の個性づくりに生かせると判断した。飲料の多くがペットボトルで流通する現在、ガラス瓶は商品価値を高める大切な要素にもなっている。

 

人口約9万人の島田市に本社を置き、創業78年を迎えた木村飲料。その歩みには、中小企業ならではの戦略が詰まっている。

 

(間 淳/Jun Aida

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