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2026/03/07

男の子が狙われる盗撮増加 専門家が警鐘「トイレに潜む危険」 性犯罪の手口と被害の防ぎ方

■専門家が指摘 「盗撮の加害者はどこにでもいるタイプ」

被害に遭うのは一瞬かもしれない。だが、刻まれた傷は長く残る。性犯罪の加害者臨床の中で包括的性教育を実践している専門家・斉藤章佳さんが2月21日、静岡市で子どもへの性加害をテーマに講演した。社会問題となっている児童盗撮についても掘り下げ、被害を防ぐ方法や加害者にも目を向けた取り組みの重要性を訴えた。【全4回の1回目】

 

被害を減らすために不可欠な加害者対応 性加害やDVを抑えられないワケ

 

昨年、世間を揺るがした事件の1つに、教員グループによる盗撮がある。名古屋市の小学校に勤務する教員らが校内で児童の盗撮を繰り返し、その画像を共有していたとされる。

 

教員による児童の盗撮は社会的なインパクトが大きく、報道機関は連日取り上げた。ただ、盗撮の加害者には社会的地位の高い人が少なくないという。埼玉県にある西川口榎本クリニックで副院長を務め、盗撮加害者の治療にも長年携わっている斉藤さんは、こう話す。

 

「盗撮の加害者は、どこにでもいるタイプです。未成年の加害者も学校生活に問題がなく、他の非行少年とは明らかに違います」

 

性教育の実践を積み重ねてきた一般社団法人「“人間と性”教育研究協議会・静岡サークル」が静岡市で開催した定例会の講師を務めた斉藤さんは、20年間で1000人以上の盗撮加害者と接してきた。そして、そのデータでは成人加害者の80%は大学または大学院を卒業していると説明。さらに、85%は会社員で、70%は婚姻歴がある。未成年の加害者は比較的IQが高く、学校への適応も両親との関係も目立った問題がないタイプが大半を占める。

斉藤さんが講師を務めた定例会の様子

■男の子の盗撮被害増加 死角が多いトイレは要注意

斉藤さんは長年盗撮という性暴力の問題に携わってきた経験から、加害者の手口や考え方に共通点を見出している。この世界を加害者がどのように認識しているのかを臨床的な言葉に分かりやすく加工して、その知識や情報を発信することで被害を減らそうとしている。

 

子どもを狙った盗撮は近年、男の子をターゲットにするケースが増えているという。中でも、危険なのは「トイレ」。公園や大型ショッピング施設のトイレは、「入りにくく、見えにくい場所」と斉藤さんは注意を呼びかける。盗撮の対象になりやすい小学校低学年の男の子は、母親と一緒に女子トイレに行くことを嫌がる年代で、被害を受けやすい状況となってしまう。性加害者は、そのタイミングを狙っている。斉藤さんが語る。

 

「死角の多いトイレは性犯罪の温床になっていると前々から思っています。小学校低学年くらいの男の子はズボンもパンツも下げて用を足します。加害者の手口を聞いているとトイレが多い。子どもたちが1人になると知っているわけです」

 

盗撮を含めた性犯罪を防ぐため、斉藤さんは自身の息子とは小学校を卒業するまで一緒にトイレに行っていたという。トイレに潜むリスクを保護者が子どもに伝える必要性を訴え、「トイレでスマホを不自然に長時間使用している人は盗撮している可能性があることを子どものうちから知って、親になった時に自分の子どもに伝えてほしいと思っています」と話した。

写真はイメージ

■盗撮開始から専門治療受診まで 平均で7年以上 

子どもをターゲットにした性加害者は、情報収集や準備を周到に進めている。行動パターンや流行りのアニメ・ゲームなど、「保護者よりも子どもの世界を理解している」と斉藤さんは言う。

 

斉藤さんは、クリニックで受診経験のある盗撮加害者からデータを取っている。統計(n=1013)によると、初めての盗撮から専門治療受診までの期間は、平均7.2年かかる。加害者の大半は週に2~3回盗撮しているため、単純計算で1000回近く盗撮して初めて専門治療を受けていることになる。斉藤さんが問題点を指摘する。

 

「盗撮は(複数の罪をまとめて処罰する)性的姿態等撮影罪の施行後、厳罰化されましたが、重い罪だと認識されていないと感じています。被害者の自尊心を奪い、安心・安全の感覚を奪う性犯罪と思っている人は少ないのではないか」

 

被害を防ぐには、リスクの高い場所や行動を知る必要がある。ただ、それだけでは根本的な解決につながらない。斉藤さんは再犯を止める加害者の治療に加えて、教育の大切さを強調する。

 

■性加害も被害も身近 「見て見ぬふりはネグレクト」

性犯罪は過去同種の犯罪歴がある人の再犯率が高く、最初の性的逸脱行動が比較的低年齢で表れる特徴もある。斉藤さんのクリニックの統計では、10代の性非行少年(n=286)が初めて性的逸脱行為をしたのは平均9.6歳で、性的な情報に触れる最初の年齢は平均6.5歳となっている。こうしたデータから、保護者に警鐘を鳴らす。

 

「性被害も加害も身近にあると知ってほしいんです。我が子が被害を受ける可能性も、加害者になる可能性もあります。性加害少年たちは住んでいる世界が狭く、知識が未熟で経験値のなさが原因になるケースもあります。私は子どもの性被害や性加害を見て見ぬふりをするのは、ネグレクトと同じだと思っています。周囲がどんな環境を整えて対応していくのかが、盗撮を含めた性犯罪を減らしていく上で大切です」

 

盗撮は性暴力であり、決して軽く捉えてはならない。リスクを知り、被害者と加害者の声を受け止める環境を整える。被害と再犯の連鎖を断つ仕組みづくりに猶予はない。

 

(間 淳/Jun Aida

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