2026/04/17
大谷翔平選手の「ノーステップ」 小・中学生には“落とし穴” 大阪桐蔭元主将が警鐘
ノーステップの打ち方は、本当に子どもたちに合っているのだろうか。ドジャース・大谷翔平選手らの影響で広がる打撃フォームに、疑問を投げかける声は少なくありません。大阪桐蔭高校野球部元主将で、現在は野球塾を運営する水本弦さんは、小・中学生の「ノーステップ」に注意すべきポイントを指摘します。
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■小・中学生は注意 「ノーステップ」は逆効果のリスク
プロ野球選手に憧れたり、動画を見てまねをしたりする姿勢は野球が上手くなる要因の1つです。憧れの選手に近づきたいと思えば、モチベーションが高くなり、積極的に練習できます。また、一流選手には高いパフォーマンスを発揮できる理由が必ずあるので、その動きを参考にすると上達のきっかけをつかめる可能性があります。
ただ、小・中学生には注意すべき点があります。まだ経験が浅く、体もでき上がっていないため、プロ選手のまねをすると逆効果になるケースがあります。例えば、最近目にすることが増えたノーステップの打ち方も一例です。
大谷翔平選手をはじめ、最近のメジャーリーガーはノーステップで打つ選手が多いです。その姿を見て、同じようにスイングする小・中学生も増えていると感じます。所属しているチームの指導者から、ノーステップで打つように指導されている選手もいます。
もちろん、ノーステップは目線がぶれないなどのメリットがあります。しかし、反動をつけていないので、パワーを生み出すのが難しい打ち方です。バットに当てるだけであればノーステップの方が確率は高いですが、これでは打球を遠くに飛ばすのが難しくなります。大谷選手らがノーステップでも飛距離を出せるのは、体重移動の技術に長け、フィジカルの強さも備えているためです。

愛知県や石川県で野球塾を運営する水本さん
■打撃で最重要な「タイミング」 感覚は足を上げてつかむ
ノーステップは簡単そうに見えるかもしれませんが、非常に難易度が高く、奥が深い打ち方です。小・中学生は、しっかりと踏み出す方の足を上げて、軸足に体重を乗せる打ち方を基本にした方が、パフォーマンスは上がります。その上で、打ち方の選択肢としてノーステップを練習すると、打撃の引き出しを増やせます。
チームの指導者からノーステップで打つように言われている選手は、タイミングを取るのが苦手な傾向があります。難しいからといって敬遠してしまえば、タイミングを取ることへの苦手意識はなくなりません。改善する機会を失ってしまいます。タイミングは打撃で最も重要な要素です。それだけに簡単に身に付かない部分はありますが、練習して自分なりの感覚をつかんでほしいと考えています。
近年使われているバットは芯の近くに当たれば、内野手の頭を越える打球になりやすいです。選手にノーステップを勧めているチーム指導者の中には、バットにさえ当たれば安打になったり、相手のミスにつながったりする可能性が高いと考えている人もいると思います。それは、目先の勝利にはつながるかもしれません。しかし、選手の可能性を狭めてしまいます。
日本のプロ野球選手を見ていると、ソフトバンク・山川穂高選手やオリックス・頓宮裕真選手のように、足を上げて反動をつけ、打球を遠くに飛ばすタイプの選手がいます。私も現役時代、どちらかというと、大きく足を上げて打っていました。私の場合は、静止した状態や小さなステップから瞬発的な力を出すよりも、反動を利用してスイングした方が初速が上がって、バットをスムーズに出すことができました。

成長期の小・中学生に合わせた指導を心がける水本さん
■指導者や保護者にも警鐘 「小・中学生でタイプを決めつけない」
しっかりと足を上げると動きが大きくなる分、タイミングを合わせるのが難しくなるかもしれません。小・中学生の頃は足を大きく上げて反動をつけた打ち方を覚えて、体ができ上がってくる高校生以降に自分のタイプなどを見極めながら、動きの無駄を省いていく考え方をすると良いと思います。
それから、小・中学生のうちは、色んな打ち方を試してほしいです。上手くいかないこともありますが、それは自分に合っていないのではなく、やったことがないからです。この年代は自分に合う、合わないというレベルにまだ達していません。やったことのない動きを合わないと勘違いしてしまう選手が多いと感じています。
小・中学生で自分のタイプを決めつけるのも、避けてほしいと考えています。体が小さいことを理由に小さなスイングが習慣になってしまうと、体が成長して大きくなった時にスイングを大きく変えるのが難しくなります。逆に、大きなスイングを小さくするのは大変ではありません。
体が大きくなくても、理想の打撃フォームやタイミングを合わせる感覚を身に付けられれば、十分に飛距離を出せます。チーム指導者や保護者の方々にも、「体が小さいから」と子どもたちの可能性を制限しない接し方をしていただけたらと思います。
<プロフィール>
水本弦(みずもと・げん)
1995年2月23日生まれ。石川県野々市市出身。小学2年生の時に野球を始め、中学時代は白山能美ボーイズで全国大会に出場した。大阪桐蔭高校では3年生で主将を務め、甲子園で春夏連覇を達成。亜細亜大学でも主将を任され、リーグ優勝5回、日本一2回。東邦ガスではけがに苦しみ、2021年に現役引退。2023年5月に「株式会社Ring Match」を設立。野球経験者に特化した人材紹介、野球塾の運営、バットの開発・販売、就労継続支援B型事業を手掛ける。








