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2022/08/24

パワーワードと優先順位 フリーアナウンサーが勧める相手に関心を持ってもらう話し方

ニュースキャスター時代の内山さん(本人提供)

■乳しぼりが得意な元キャスター内山絵里加さん ギャップ生かした自己紹介

特技は乳しぼり。よく肥溜めに落ちていた。静岡県浜松市出身のフリーアナウンサー内山絵里加さんは、人前で話す時や初対面の人との挨拶で一言目を大切にしている。これまでの経験や日々感じたことをつづるコラム「うちやまのこばなし」、第2回のテーマは「関心を持ってもらう話し方」。内山さんは、パワーワードと優先順位をつけた準備をポイントに挙げる。

 

乳しぼりが得意なフリーアナウンサー、内山絵里加です。早口言葉を言いながら、バケツを牛乳でいっぱいにする速さを競う大会があったら、私はきっと優勝できます。

 

突然、何を言い出すのかと思われたかもしれませんが、今回は挨拶やプレゼンテーションなどで生かせる話し方について、皆さんに伝えていきたいと思います。自分の話に興味を持ってもらうためには、一言目が大事だと考えています。私の場合は、自己紹介や挨拶で「特技は乳しぼりです」と切り出します。話に引っかかりをつくると、「えっ、何を話すんだろう」と聞く耳を持ってもらえます。

 

私の実家は酪農をしていて、牛を25頭ほど飼っていました。浜松市の北部にある旧引佐郡の「いなさ牛乳」です。23歳の頃から牛の世話をしていたので、乳しぼりが得意なんです。牛の出産も祖父母、両親、姉弟と家族総出でやっていました。

 

■実家は酪農 子どもの頃は肥溜めに落ちることは日常

満ち潮の時に生まれるので、時間を調べて夜中や朝方に起きます。逆子の場合は、牛の足にロープをくくりつけて、みんなで引っ張ります。絵本の「おおきなかぶ」のような感じです。子どもの頃は牛舎で過ごす時間も長く、よく肥溜めに落ちていました。

 

自己紹介で乳しぼりの話をすると、関心を持ってもらえます。アナウンサーになる時の面接でも、他の志望者と違いを出したり、印象を残したりするために、乳しぼりを自己PRにつなげていました。ずっとスタジオにいるよりも現場を駆け回りたいと思っていたので、汚い話で申し訳ないのですが「子どもの頃から泥まみれ、糞まみれになっていたので、厳しい現場でも大丈夫です」と伝えていました。

 

■人を引きつける表現や枕詞 パワーワードで苦手意識を払しょく

このほかにも、話を聞いてもらう方法があります。話をする時は結論からと言われた経験がある方は多いのではないでしょうか。「結論から言いますと」というように、「今から話す内容は大切」とサインを出すと、耳を傾けてもらえます。「ここだけの話ですが」、「きょうは特別に」という表現も同じです。

 

人を引きつける話し方が上手い人は、こうした枕詞や一言目を効果的に使って相手の心をつかんでいます。私はタレントのアンミカさんが好きで、テレビ番組や日めくりカレンダーを見ています。アンミカさんは、何でもないことを面白くする力、話の引っ掛かりをつくるのが、とても上手です。

 

例えば、おしぼりの話をする時に、「あのな、白って200色あんねん」と言うように話し始めるので、思わず聞いてしまいます。3分と短い挨拶でも、ダラダラ話すと相手は長く感じます。パンチのある一言、パワーワードを持っていると、人前で話すのが少し楽になると思います。

 

■話し上手=聞き上手 取材で感じた質問に優先順位付ける大切さ

もう1つ、話をする時に大切なのは準備です。上手く話すには、上手く聞く力も求められます。私は現場に出るのが好きだったので、取材する機会もたくさんいただきました。取材に行く前は、相手がどんな方なのか、どんな会社なのかなど下調べします。苦手な分野だった場合は、専門知識のある記者やデスクに調べた内容に間違いがないか、質問しても相手に失礼がないかを確認します。

 

質問事項は事前にノートに羅列してから、優先順位をつけます。時間は限られているので、原稿や企画に必要なもの、個人的に興味を持ったもの、興味深い答えだったら盛り込むものというように分けて、その中でも重要度の高いものから聞いていきます。ただ、実際に話を聞いて、想定とは違う話や、より伝えたくなる話も出てくるので、相手の言葉を聞きながら頭の中で優先順位が変わっていきます。

 

たとえ時間が限られていても、いきなり本題に入ることも少ないです。相手の話しやすい雑談や、私との共通点を話してからの方が、結果的に内容が濃い取材になります。最初からこちらの聞きたいことばかりを質問するよりも、少しでもお互いを知ってからの方が心を開こうとなるのは自然です。聞き方が上手い人は、話し方も上手いと感じています。

 

<プロフィール>

内山絵里加(うちやま・えりか)。19881129日生まれ、浜松市出身。浜松日体高から青山学院に進学し、2011年にSBS静岡放送入社。夕方の報道・情報番組のメインキャスターや、ラジオ番組「内山絵里加のふくわうち」のパーソナリティを担当。20224月にフリーアナウンサーとして独立。ラジオ番組は現在も継続中。その他、司会やナレーションなど幅広く活動。

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