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2025/08/15

「従業員退職型」の倒産急増 最多更新ペースのワケ 静岡県でも雇用喪失が過去最悪

■従業員退職型の倒産1~7月で74件 初の年間100件超ペース

今年1〜7月に判明した「従業員退職型」の倒産が74件に達し、前年同期の46件から約6割増加した。民間の調査会社・帝国データバンクによると、このペースが続けば通年で初めて100件を突破し、集計可能な2013年以降で最多だった昨年の90件を大幅に更新する見通しだ。倒産全体に占める割合も高まっており、人材流出が事業存続を左右する事例が急増している。

 

なぜ黒字なのに倒産? 全国で増加する”あきらめ廃業”

 

調査結果によると、業種別では「サービス業」が最多の19件で、全体の25.7%を占めた。ソフトウェア開発などのIT産業や映像制作といった分野で人材の引き抜きや流出が相次ぎ、1〜7月としては過去最多を更新した。

 

例えば、今年1月に破産したピーシーネットは小規模運営の中でエンジニア流出や外注費増が重なり収益性が低下。佐賀県に本社を置くクレセントホームは新代表就任後に幹部社員が相次いで辞め、営業力・施工力の低下が致命傷となって5月に破産した。

 

2番目に件数が多かった「建設業」は17件に上った。設計者や施工監理者など資格を持つ作業員や営業幹部の退職により、事業運営が困難となるケースが目立った。

 

さらに、「製造業」「卸売業」「運輸・通信業」でも件数は過去最多を記録。トラック輸送を中心とした運輸業では、ドライバーや管理職の退職が相次ぎ、受注に対応できなくなる事例も発生しているなど、幅広い業種で従業員流出が経営を直撃している。

 

■静岡県の雇用喪失 過去最多を更新する2348人

こうした背景には、転職市場で待遇改善を求める動きの広がりと、賃上げによって優秀な人材を高給で確保する企業の増加がある。一方、業績悪化などで賃上げできない中小企業も多く、「待遇改善をしないことによる人材流出リスク」が高まっている。

 

帝国データバンクは、十分な報酬を支払う余力のない中小零細企業で淘汰が進み、「従業員退職型」の倒産がさらに表面化する可能性があると指摘している。特に、事業の中核を担う人材の流出が一度に起きた場合、再建の余地がないまま短期間で倒産に至るケースが今後も増える恐れがあるという。

 

全国的な傾向は静岡県でも当てはまる。県内で昨年「休廃業・解散」した件数は1941件に上り、前年から19.8%も増加した。雇用喪失は少なくとも2348人で、2016年以降の最多記録を更新した。休廃業企業の多くは小規模零細で資産超過・黒字の企業も一部含まれていることから、早期手仕舞い(いわゆる「あきらめ廃業」)の増加も示唆されている。

 

県内では企業側が春闘などで積極的に賃上げに応じる動きが目立ち、離職抑止への取り組みが進展している。一方で、休廃業の増加と雇用喪失の深刻化は無視できない。「賃上げできない企業」と「賃上げを進める企業」の二極化が進む中、雇用維持と事業継続のためには、資金支援・設備投資支援、事業再構築支援などの強化が急務と言える。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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