2025/12/01
三重苦のパン業界“復活”の兆し 倒産件数4割減少 インバウンド需要とコメ高騰が追い風

写真はイメージ
■パン屋の倒産 昨年の26件から15件に減少
原材料や人件費、エネルギーコストの上昇という「三重苦」に直面してきたパン業界が、“復活”の兆しを見せている。今年の倒産件数は昨年から4割減少し、4年ぶりに前年を下回った。背景には、インバウンド需要の回復やコメ価格高騰を受けたパン食需要の増加があるという。
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帝国データバンクの調査によると、今年1月から10月までに倒産したパン屋の件数(負債1000万円以上の法的整理)は15件で、昨年の26件から大幅に減少した。
帝国データバンクは都市部や観光地に立地するパン屋では訪日客の増加が追い風となり、客足が戻りつつあると分析する。静岡県でも富士山エリアや熱海など訪日観光客が多い地域があり、インバウンド需要の回復がパン屋の利用増につながりやすい環境がある。
コメ価格の高騰でパン食が選ばれやすくなっている点も全国共通の動きで、手軽に購入できる惣菜パンや菓子パンなどは、地域住民が日常的に利用する店舗の需要増につながる傾向がある。こうした背景から、地域密着型の小規模ベーカリーが多い静岡県でも需要拡大が起こりやすい土壌があると考えられる。
パン屋の経営環境は依然として厳しいものの、昨年度は7割近いパン屋が黒字を確保し、最終利益が増益だった企業も4割を超えた。食パンなど基礎的な商品は手頃な価格を維持しつつ、国産素材やストーリー性を持たせたパンには付加価値を反映するなど、価格設定の工夫が利益改善につながった。
また、イートイン需要を取り込む「ベーカリーカフェ」の展開や、「地域密着型」、「コンセプト特化型」など新しい業態への進化も広がっている。観光客と地元客の双方が来店する地域では、こうした形態が強みとなりやすく、静岡県のように観光地と住宅地が隣接するエリアでは相性が良い。
パン食は朝食に限らず、ランチやカフェ需要、贈答品としての用途も広がっている。帝国データバンクは「コスト高に対応できる価格設定と付加価値の両輪で乗り越えられるかが問われる」とまとめている。
(SHIUZOKA Life編集部)








