2025/12/25
中国と韓国に“逆襲”へ シェア8%の日本がV字回復したワケ 政府の後押しで加速に期待
■日本の造船業が急回復 円安追い風に大幅増益
日本の造船業がV字回復している。世界の造船市場では中国と韓国が受注を伸ばし、日本はシェアを落としてきた。だが、国内造船業の業績は直近で急回復。政府は官民連携による大規模投資を打ち出しており、その影響は造船関連企業が集積する静岡県にも及びつつある。
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国土交通省によると、2024年の世界の船舶受注量(契約年ベース)の国別シェアは中国が71%、韓国が14%だった。日本は8%にとどまり、受注量では中韓が大きく上回っている。
2024年の日本船主による発注先は日本が63%を占めたものの、中国向けが32%、韓国向けが5%と中国への依存は依然として高い水準にある。中韓の造船所は技術力も高めており、日本造船業の優位性が盤石とは言えない状況が続いている。
ただ、こうした環境下でも、国内造船業の業績は急回復している。東京商工リサーチは、保有する約440万社の企業データから船舶製造・修理業を主業とする企業を分析。7期連続で売上高と当期純利益を比較できる222社を抽出した。
調査によると、2019年度の売上高は1兆6273億円(前年度比5.8%減)に落ち込み、当期純利益は866億円超の赤字となった。その後、2022年度まで売上高は1兆5000億円前後で推移し、4期連続の赤字が続いた。
転機となったのが為替動向だ。円安によって価格競争力が高まり、輸出船の受注が増加。2023年度の売上高は1兆8748億円(同15.8%増)と急伸し、当期純利益は633億円超の黒字に転換した。2024年度は売上高2兆734億円(同14.0%増)と2兆円台に乗せ、当期純利益は1435億円超(同126.3%増)と大幅な増益を記録した。

写真はイメージ
■造船関連盛んな静岡県 政府の積極投資で需要拡大の期待
政府は造船業の再生と競争力強化を掲げ、総合経済対策の中で「造船業再生ロードマップ」を年内に策定する方針を示している。造船能力の抜本的向上を目指し、総額3500億円規模の10年間の基金を創設。ゼロ・エミッション船の建造支援などを通じ、官民連携で最大1兆円規模の投資を念頭に置く。
造船は建造期間が長く、関わる企業や人員も多い産業だ。船体、エンジン、電装、金属加工など幅広い分野がサプライチェーンを形成しており、業界の回復は関連産業や地域経済にも影響を及ぼす。
静岡県内には、港湾を基点とした物流機能に加え、金属加工や機械部品など船舶関連産業に携わる企業が立地している。清水港などを中心に、船舶修理や関連サービス、部品供給に関わる事業者も存在する。
造船業の業績回復や政府の支援策は、こうした関連分野にも需要拡大の可能性をもたらす。東京商工リサーチは「造船業の景気は数年サイクルで循環する。従来からのリスクヘッジに加え、業界再編に目配せが必要」としている。
中国と韓国が世界市場を席巻する中で、日本の造船業は業績面で持ち直しつつある。官民の投資が実行段階に移ることで、その回復基調が持続するかが注目される。
(SHIZUOKA Life編集部)








