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2026/06/02

運賃2.6倍、大人3500円 「日本でここだけ」の絶景列車 地元反発を経て“値上げ”決定

■日本で唯一のアプト式鉄道 大井川鉄道井川線が観光鉄道に

「日本でここだけ」の絶景を走る小さな赤いトロッコ列車が、大きな転換期を迎える。静岡県の山あいを走る大井川鉄道井川線が、7月1日から観光鉄道として新たな運行に切り替わる。料金は乗車区間にかかわらず大人3500円、小児1750円の一律となる。地元から反対意見が上がり、一度は開始時期の再検討に入った計画が、住民向けの新制度も盛り込む形で正式に決まった。

 

【写真で比較】レインボーブリッジは静岡県が”本家”? 大井川鉄道井川線の奥大井湖上駅に架かる橋

 

井川線は、静岡県川根本町の千頭駅と静岡市葵区の井川駅を結ぶ路線。「南アルプスあぷとライン」の愛称でも知られ、日本で唯一のアプト式鉄道として運行している。普通鉄道として日本一の急勾配を走る区間や、湖に浮かぶように見える奥大井湖上駅など、沿線には観光客や鉄道ファンを引きつける見どころが多い。

 

大井川鉄道によると、7月1日以降、井川線の観光列車は「座席定員制」と「列車指定制」で運行する。利用者は予約時に乗車する列車を指定し、当日は空いている号車や座席を利用する。予約と決済は専用サイトで24時間受け付け、電子チケットで乗車できる。空席がある場合は当日申し込みも可能で、オンラインのほか、駅窓口や車内でも手続きできる。

 

料金は募集型企画旅行商品として販売され、大人3500円、小児1750円。乗車区間にかかわらず同一料金となる。これまで井川線は区間ごとの普通運賃で利用でき、千頭―井川間を乗り通した場合の大人片道運賃は1340円だった。全区間で比較すると約2.6倍となり、短い区間を利用する場合にはさらに負担感が大きくなる。

 

一方で、観光鉄道化にあわせて、井川線ならではの魅力を前面に打ち出す。日本で唯一のアプト式鉄道が生み出す迫力ある走行や、普通鉄道日本一の急勾配、奥大井湖上駅の絶景などを、より快適に楽しめるようにするとしている。

大井川鉄道井川線は日本で唯一のアプト式

■当初開始予定の6月から延期 地元から反対意見

ただ、今回の方針をめぐっては、地元から不安の声も上がっていた。当初は6月からの開始が予定されていたが、料金の大幅な変更や説明の進め方に対し、沿線住民や関係者から反対意見が出た。井川線は観光路線である一方、川根本町や静岡市井川地区の住民にとっては生活に関わる移動手段でもある。説明会では、住民への説明不足を指摘する声や、利用負担の増加を懸念する意見が出ていた。

 

こうした経緯を踏まえ、今回の正式発表では、一般利用や沿線住民に配慮した制度も盛り込まれた。上り始発の402列車と下り最終の405列車には、従来通りの運賃で利用できる一般車両の自由席を連結する。一般車両は予約不要で利用できる。全列車が完全予約制になるわけではなく、限られた本数ながら、従来の運賃で利用できる車両を残す形となる。

 

さらに、川根本町全域と静岡市井川地区の住民を対象に、「井川線沿線住民パス」も新設する。発行手数料は1000円で、有効期間は発行日から2年間。井川線全線を乗り降り自由で利用できる。発行は7月1日から千頭駅で始める。ただし、トビー号や星空列車など一部の列車は対象外となる。

 

大井川鉄道は、2022年の台風被害で大井川本線の一部区間が不通となるなど、厳しい経営環境が続いている。井川線は全国的にも珍しい観光資源を持つ一方、山あいの地域交通を担う路線でもある。観光客にとっての価値を高めながら、地元の生活利用をどう守るのか。7月から始まる新たな運行は、地方鉄道の存続と地域との関係を考える上でも注目される。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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