生活に新しい一色
一歩踏み出す生き方
静岡のニュース・情報サイト

検索

情報募集

menu

2023/01/12

静岡新聞が夕刊廃止 デジタル移行は「いばらの道」 地方から進む新聞・テレビの衰退

3月で夕刊廃止を発表した静岡新聞社

■静岡新聞3月で夕刊廃止 朝刊やデジタル強化へ

静岡新聞社が3月いっぱいで夕刊を廃止する。朝刊やデジタルの強化を理由にしているが、地方紙は静岡県に限らず苦境に立たされている。さらに、地方紙と同じ状況が全国紙やテレビ局にも起きると予想され、かつては花形の職種だったオールドメディアは難しい舵取りを迫られている。

 

静岡県内で圧倒的なシェアを誇る静岡新聞は現在、朝刊と夕刊、1日2回新聞を発行している。しかし、静岡新聞社は3月末で夕刊を廃止すると発表した。その理由を次のように説明している。

 

「読者の皆さまのライフスタイルの変化に合わせて、夕刊を廃止します。きめ細かな地域の情報と国内外のニュースをバランスよく、誌面とデジタルで提供します」

 

静岡新聞社は夕刊廃止に伴い、朝刊を拡充するとしている。現在夕刊で展開している特集や暮らしに役立つ新たな特集を朝刊に掲載するという。これまで通り、購読料は月決め3300円としている。

 

静岡新聞社の関係者は「夕刊の配達はアルバイトがメインなので、大規模に社員を減らす策を講じる必要はありません。ただ、夕刊がなくなることには販売店から強い抵抗がありました」と話す。

 

活字離れが叫ばれて久しい。かつては通勤中のバスや電車でサラリーマンが新聞を読む姿が定番だったが、今は世代を問わず大半がスマートフォンを触っている。

 

新聞を購読する家庭は激減し、新聞を読んだことがない小学生や中学生は珍しくない。こうした時代の流れに抗えなかった静岡新聞社の判断に、読者からは理解を示す声が多い。

 

■読者は「仕方ない」 「購読料変わらないからやめる」の声も

SNSには「今の時代、仕方ない」、「夕刊やめるのは大英断」、「前日のニュースを読まされても仕方ないし、ネットがあるから」といったコメントが並ぶ。「平日の楽しみだったので残念」と夕刊がなくなることを惜しむ声も上がる。

 

また、夕刊が廃止になっても購読料が変わらないことから「何十年も購読していたが、新聞を取るのをやめることにした」、「購読料が変わらないなら、実質的には高くなる」などの意見もある。

 

新聞社を取り巻く環境は厳しさを増している。すでに数年前から新聞、テレビ、ラジオを合わせた広告収入は、インターネットを下回っている。その差は開く一方で、状況が好転する見込みは薄い。早期退職者を募る動きは大手新聞社でも進んでいる。

TBS系列の静岡放送も入った静岡新聞社の本社

■地方スポーツ紙は紙面休刊 止まらない新聞、テレビ離れ

スポーツ紙では北海道で発行していた「道新スポーツ」が昨年11月に紙面を休刊し、ウェブサイトに特化した。九州の「西日本スポーツ」も今年3月で紙面をやめて、デジタルに完全移行する。大手メディアに勤務する記者は、新聞業界の将来を語る。

 

「地方スポーツ紙の流れは全国展開するスポーツ紙、地方紙や全国紙も避けられません。今から新聞の需要が高まる可能性はゼロに等しい。新聞を刷れば刷るほど赤字になりますが、新聞社を名乗っている以上、新聞の発行はやめられないのが現実です。大規模な人員削減でデジタルに特化して生き残る道を模索するのか、もしくは倒産するのか、選択肢が限られたいばらの道です」

 

そして、地方紙を中心に新聞業界で起きていることは、数年遅れてテレビ業界で再現されると予想する。そして、その兆候は表れているという。

 

「5年くらいのタイムラグはありますが、広告収入の減少や人員削減など、新聞業界とテレビ業界では同じ事態に陥っています。テレビ局もデジタル強化など、本業の番組制作やテレビCM以外の部分で収益を上げようと必死です。しかし、テレビ局である以上、番組をつくらないといけない。テレビ離れの流れは今後さらに加速し、番組をつくるほど赤字が膨らむ構造になると思います」

 

■時代と合わないあり方 デジタル移行は大幅な人員削減不可避

新聞社もテレビ局も業績を回復させるのは極めて難しいという。いかに衰退するスピードを遅くするか、「時間稼ぎをしている状況」と指摘する。

 

限界は、企業体力のない地方から目に見える形で限界が表れる。新聞もテレビも根本にある方針が時代に合わない以上、「ネットメディアに席を奪われるのは必然」と強調する。

 

「新聞に出る情報は、すでに新しくないわけです。朝刊が届くころにはワールドカップの試合結果が出ているのに、前半までのスコアしか載っていない紙面に需要はありません。テレビも同様で、決められた時間に番組を流すやり方は、今の生活スタイルと全く合っていません」

 

新聞社もテレビ局もデジタル強化を打ち出している。しかし、現在のコンテンツをデジタルで配信すれば成功するほど簡単な話ではないという。

 

「新型コロナ新規感染者の速報に代表されるように、新聞社やテレビ局は内容の乏しい短い原稿や中身が伴わない見出しをつけた原稿をネットで配信してPV数をかせぎ、広告収入を得ようとしています。ただ、この手法はビジネスモデルにはなり得ませんし、目先の利益を必死に取りにいかざるを得ない厳しさを物語っています」

 

事業の核をデジタルへ移行すれば、新聞社もテレビ局も必要のない部署や過剰人員が出てくる。大きな痛みを覚悟しても既存のやり方を変えられるのか。静岡県を代表する企業、静岡新聞社が生き残り策に選んだ夕刊廃止はオールドメディアの今後を占う。

 

SHIZUOKA Life編集部)

関連記事