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2023/03/17

静岡で換算すると県民62人がメジャーリーガー ドミニカ共和国と日本 育成法の違い

野球大国として知られているドミニカ共和国

■ドミニカ共和国で野球学んだ阪長友仁氏 掛川市で講演

人口比で換算すると、静岡県出身選手62人がメジャーリーグでプレーしていることになる。海外で野球を学び、現在はNPO法人「BBフューチャー」の理事長として、高校野球のリーグ戦を全国に広げている阪長友仁さんが静岡県掛川市で講演。今大会は優勝候補に挙げられながら1次リーグで敗退したものの、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の優勝経験があり、170人ほどのメジャーリーガーがいるドミニカ共和国と日本の違いを解説した。

 

高校野球にリーグ戦を導入した「BBフューチャー」の理事長・阪長さんは人気漫画「ドカベン」のモデル校として知られる新潟県の新潟明訓で甲子園に出場し、立教大学でも野球を続けた。その後、旅行会社勤務を経て“野球の旅”を始めた。

 

野球を世界に広げようと、スリランカやガーナなどで指導者を務めた。さらに、青年海外協力隊やJICAの企画調査員で中南米に渡り、野球の知識を深めた。この海外で過ごした時間が野球への考え方を大きく変えるきっかけとなった。

 

特に衝撃的だったのは、ドミニカ共和国だった。2013年の第3回WBCで優勝した野球大国で現在、170人ほどのメジャーリーガーがいる。ドミニカ共和国の人口は約1100万人。日本の人口と今メジャーでプレーしている日本人選手の人数を見れば、その数がいかに驚異的か分かる。人口が約365万人の静岡県で考えると、県内に62人のメジャーリーガーがいる計算になる。

掛川市で講演した阪長さん

■目指す舞台に違い 15歳で投内連携や変化球苦手でも気にしない

阪長さんは、こうした数字を示しながら、ドミニカ共和国と日本の高校野球の違いを指摘した。まず、目指す舞台の違いだ。ドミニカ共和国の選手はメジャーリーガーを目標に定めているため、15歳くらいでも投内連携ができない選手や変化球が打てない選手は珍しくない。その年代では身体能力を高めたり、木製バットで直球に振り負けない打撃を磨いたりしており、弱点や課題があっても気にしないのだという。

 

一方、日本の高校生が甲子園出場を目標とすれば、15歳の段階で一通りの技術や知識を身に付けなければ間に合わない。持っている能力が高い選手でも、スケールが小さくなってしまう傾向にある。

 

また、反発力の高い日本の金属バットは打撃技術の向上と木製バットへの対応を遅らせてしまうという。トーナメント制の日本に対し、ドミニカ共和国は全チームが72試合を戦うリーグ制。より多くの実戦経験を積む場があり、より多くの選手が試合に出るチャンスがある。

 

阪長さんは他にも、高校生年代のコーチングの違いも挙げた。ドミニカ共和国ではメジャー球団傘下の指導者が選手を指導し、日本は高校の教員が担当する。阪長さんは「どちらが良い悪いではなく、指導者に求められるものが変わってきます。ドミニカ共和国の指導者は育成力、日本の指導者は勝利が評価の対象となります」と説明する。

 

トーナメント制の大会で指導者はチームの勝敗によって評価される仕組みであれば、特定の選手に起用が偏る勝利至上主義の高校が出てくるのは必然と言える。メジャーリーガーの育成が野球の目的ではない。ただ、ドミニカ共和国から、これだけ多くのトップ選手が誕生している理由を身体能力の差だけで片づけることは、日本の子どもたちの可能性を狭める。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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