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2022/09/13

静岡県牧之原市で幼稚園バスに置き去りにされた園児死亡 専門家提言「今すぐできる対策」

事件が起きた送迎バス(川崎幼稚園のHPより)

3歳の女の子が熱中症で死亡 送迎バスに取り残される

静岡県の牧之原市にある認定こども園「川崎幼稚園」に通っていた河本千奈ちゃん(3歳)が送迎バスに置き去りにされ、熱中症により死亡した事件が発生してから12日で1週間を迎えた。政府が対策に乗り出すなど、再発防止の動きは全国的に進んでいる中、どうすれば同じような悲劇を防げるのか。専門家は、今すぐにでもできるいくつかの対策を提案している。

 

今月5日、静岡県牧之原市の「川崎幼稚園」に通っていた河本千奈ちゃんが通園バスに取り残され、熱中症で死亡した。この日、牧之原市の最高気温は30度を上回っていた。千奈ちゃんは他の園児5人とともに園長が運転するバスで園に到着したが、鍵を閉められた車内に取り残された。

 

同様の事件は昨年7月、福岡県でも起きている。5歳の園児が園の送迎バスの車内に取り残されて死亡した。この事件を受け、政府は全国のこども園などに通知を出し、バスを乗り降りする園児の人数を確認するよう徹底を求めていた。そして、わずか1年余りで2度目の事件発生を重く受け止め、国として初となる統一マニュアルの策定を決めた。

 

■バスの入口で靴を脱ぐルールや日常的な訓練 専門家が提案する対策

どうすれば幼い園児の命が犠牲になる痛ましい事件を防げるのか。危機管理の専門家は、今すぐに導入できる対策を提案している。まずは、バスに乗ったら園児が靴を脱いで、出入り口に靴を置いておく方法。仮にバスの運転手や保育士らが、バスに残った園児を見落としそうになったとしても、靴が残っていれば車中にいることに気付く。手段は原始的だが、置き去りを防ぐ方法には効果がある。

 

次に、取り残された時を想定した園児たちの訓練。万が一、車内から出られなくなってしまった時は、バスのクラクションを鳴らして周りに気付いてもらう方法を学んでもらう。園児の力ではクラクションを押す力が足りないことを想定して、ハンドルの上に座り、体重をかけてクラクションを鳴らすように伝える。

 

ただ、実際に置き去りにされた園児はパニックになってクラクションを鳴らす手段を思い出せない可能性がある。日常的な訓練に加えて、バスの車内にイラストを貼っておくなど、園児が自ら動けるような工夫が必要になる。専門家は「しっかりと行動できる年中、年長なら有効になるが、年少以下の子どもは難しいかもしれません」と話す。

 

■置き去り検知する機器は欧州では一般的 日本にも導入の動き

時間やお金が必要な対策としては、園児の置き去りを検知する機器の導入が挙げられる。欧米では一般的で、数年後には置き去り防止装置の設置を新車の購入者に義務化する方向で進んでいる。日本でも海外の製品を輸入して国内で販売する動きや、国内で開発を進める動きがある。

 

他には、子どもにGPS機能のある機器をもたせて保護者や保育士らが園児の居場所を把握したり、緊急時に子どもがアラームを鳴らしたりする方法も考えられる。ただ、子どもと連絡手段となる機器を大人が携帯せずにSOSを見逃せば、子どもの声は届かない。

 

事件を受けて、牧之原市は市内全ての保育所や小、中学校に対し、職員の情報共有や複数人でのチェック体制を徹底するよう呼び掛けた。静岡県は県内の保育施設などにバスの運行状況を確認する調査票を送り、今後、一斉立ち入り調査を実施することを決めた。

 

人間にはミスがあり、機械には故障がある。全てにおいて、完璧な対策はない。だからこそ、緊急事態が起きた時の想定や備えを万全にし、最悪の結果を防ぐ必要がある。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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