「静岡県に住む人」と「静岡県に来る人」に向けて情報発信する「静岡ライフ」では今月から、静岡県のお隣・愛知県の情報も強化していきます。その一環として、大阪桐蔭高校野球部で主将として甲子園春夏連覇を果たし、現在は名古屋市で野球経験者に特化した人材紹介や野球塾の運営を展開している水本弦さんのコラムをスタートします。人材紹介、野球塾ともに静岡県在住者も利用しているそうです。

コラムではアマチュア野球界の王道を歩んだ経験や、現在の事業などについて語っていただきます。野球ファンや経験者はもちろん、キャリアアップを目指す社会人にも向けたテーマを企画しています。ぜひ、ご覧ください。初回のテーマは、水本さんが起業した理由です。

強豪校は複雑!?　水本さんが明かす大阪桐蔭高校や亜細亜大学のサイン

■大阪桐蔭野球部の元主将・水本弦氏　大谷・藤浪世代で活躍

初めまして。株式会社Ring Matchの水本弦と申します。コラム開始にあたり、まずは簡単に自己紹介させていただきます。

私は石川県野々市市出身で、中学生までは地元で暮らしました。父と兄の影響を受けて小学2年生で野球を始め、甲子園出場やプロ野球選手を目標としていました。中学卒業後は親元を離れて大阪桐蔭高校に進み、主将を務めた3年生の時に甲子園で春夏連覇を成し遂げました。チームメートだった同級生の藤浪晋太郎投手と澤田圭佑投手、1学年下の森友哉捕手はプロ入りしています。

大阪桐蔭卒業後は亜細亜大学に進み、その後は名古屋市に本社を置く東邦ガスで26歳まで野球を続けました。ユニフォームを脱いでから1年半、東邦ガスで社業に専念した後、退社して名古屋市にRing Matchを立ち上げました。

Ring Matchでは主に「①野球経験者に特化した人材紹介」、「②野球塾の運営」、「③バットの開発・販売」と、3つの事業を展開しています。その中でも、野球経験者と企業をマッチングさせる「人材紹介」に強い思いがあり、起業を決意しました。

名古屋市で野球塾を運営する水本さん（本人提供）

■プロ断念＆サラリーマンで“戦力外”　人生で2つの挫折

私には30年間の人生で、2つの大きな挫折があります。1つは、「プロ野球選手になれなかったこと」です。詳しくは今後のコラムでお届けしますが、私は大学1年生の時にプロをあきらめました。もう1つは、東邦ガスで「サラリーマンとして戦力になれなかったこと」です。

東邦ガスでは野球部に所属していた時と、野球を引退してからでは業務内容が大きく変わりました。野球部は午後から練習になるため、社業は昼頃までになります。当時、私は電気販売の営業を担当していました。勤務時間は限られていましたが、営業は向いていて、それなりの成績を上げていました。

ところが、引退後は設備管理の部署に異動しました。ここでは、ガス管の工事を手配したり、施工を管理したりする業務を担当しました。職場は工業高校や理系大学の出身者ばかりで、私は基本的な用語さえ分かりませんでした。1年半かけても、なかなか仕事を覚えられず、戦力になれない申し訳なさばかり募っていきました。

そして、同時に野球との共通点も感じました。「適性はそれぞれ異なり、誰でも輝ける場所がある」と。

私は営業には適性がありましたが、設備管理は不向きでした。野球で守備位置をコンバートした選手が活躍するように、仕事にも適材適所が重要だと身を持って知りました。

ネクストキャリアに起業を選んだ水本さん（本人提供）

■野球経験者の第二の人生サポートへ　「Ring Match」立ち上げ

野球経験者は学生の期間、生活の大半が野球になります。特に、大学生は4年生の秋までリーグ戦があるため、就職活動する時間が十分に確保できません。自己分析や企業研究できないまま入社した企業で力を発揮できず、モヤモヤしている人は少なくないと思います。

一方、私のケースに限らず、企業側も野球経験者の長所を生かし切れていないと面があると感じています。野球部出身者は「礼儀正しく体力があるので営業が向いている」というイメージがありますが、そうとは限りません。課題解決や分析に長けたタイプもいれば、組織のマネージメントが得意なタイプもいます。

個々の長所を生かせる職場にめぐり合えれば、働く人も企業も双方が幸せです。そのサポートをするのが、Ring Matchです。社名には、誰もが自分にふさわしい土俵（Ring）で勝負できる企業と結びつける（Match）意味を込めています。

Ring Matchを設立して、2年半ほどが経ちました。求職者の登録数も人材紹介する企業数も順調に伸びています。強みを生かせる企業に転職して活躍する野球経験者がたくさんいます。たとえプロになれなくても、野球経験は社会で大きな武器になります。ユニフォームを脱いでからのネクストキャリアも輝けるように、私たちがサポートしていきます。

＜プロフィール＞

水本弦（みずもと・げん）

1995年2月23日生まれ。石川県野々市市出身。小学2年生の時に野球を始め、中学時代は白山能美ボーイズで全国大会に出場した。大阪桐蔭高校では3年生で主将を務め、甲子園で春夏連覇を達成。亜細亜大学でも主将を任され、リーグ優勝5回、日本一2回。東邦ガスではけがに苦しみ、2021年に現役引退。2023年5月に「株式会社Ring Match」を設立。野球経験者に特化した人材紹介、野球塾の運営、バットの開発・販売の事業を手掛ける。