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2022/11/23

1日50分でプロ輩出した野球部や2時間で過去最高成績のバスケ部 部活の工夫を共有

静岡聖光学院高校で21、22日の2日間開催された部活動サミット

■1日50分の練習で甲子園目指す広島・武田 オリックスに卒業生

静岡市の静岡聖光学院高で22日まで2日間行われた「部活動サミット」には、短時間練習で成果を出す中学と高校が全国から集まった。50分の練習時間で甲子園出場を目指し、プロを輩出した中高一貫校。さらに、選手が主役の「ボトムアップ理論」を掲げて2時間の練習で、過去10年の最高成績を残したバスケットボール部などが取り組みを発表した。

 

部活動サミットには、聖光学院を含めて静岡県内外から12の中学と高校の生徒や顧問が集まった。元陸上選手の為末大さんによる講演に加えて、各学校が短時間で成果を出す部活動の工夫を発表した。

 

広島県にある中高一貫校・武田の野球部は勉強と部活を両立させるため、50分の練習時間で甲子園出場を目指している。高校野球の常識では考えられない活動時間ながら、2019年のプロ野球ドラフト会議では谷岡楓太投手がオリックスから育成2位で指名された。今秋は内野海斗投手がソフトバンクから育成4位で指名を受けている。

 

50分と限られた練習には全て根拠がある。設定した目標に対し、あらゆる要素を数値化する。例えば、投手が140キロまで球速を上げるためには、体のどの部分の使い方を修正し、どの部分を強化すべきかなどをデータで表し、現状は何が足りないのか洗い出す。

活動内容を発表する武田高校野球部の岡嵜監督

■中高一貫を活用 中学生の野球部員は週に1回、水泳とゴルフ

四国アイランドリーグの徳島でプレーした経験を持つ岡嵜雄介監督が重視しているのは、競技特性を学ぶこと。野球であれば、守備のパターンは288通りで、走者一、二塁の守備の精度を高めれば全体の守備力が上がるという。試合における1つのアウトも全てが同じ意味を持つわけではなく、初回の先頭打者など重要度の高い5つのアウトを取る練習に重点を置く。

 

中高一貫の特徴を生かし、中学生の練習メニューには週1回ずつ水泳やゴルフを取り入れる。岡嵜さんは意図を説明する。

 

「水泳は肩甲骨の可動域を広くする効果があります。ゴルフは小さなボールを上手く打てない経験をすることで、ゴルフボールよりボールが大きい野球なら打てるという感覚を身に付けます。もしゴルフに向いていたら、子どもたちの可能性を広げるために野球から転向しても良いと思っています」

 

2014年に武田へ赴任した岡嵜監督は、中学時代に無名だったオリックスの谷岡投手を最速152キロまで成長させ、2020年夏の広島大会では甲子園出場経験のある瀬戸内を破ってベスト4まで進んでいる。競技特性の分析に長けた岡嵜さんは、競技未経験ながら別の高校でホッケー部の監督を務め、インターハイでベスト8に入っている。

ボトムアップ理論で過去10年の最高成績を残した安田学園高校バスケ部

■練習時間2時間の安田学園バスケ部 ボトムアップ理論で過去最高成績

武田に続いて取り組みを発表した東京都の安田学園高・男子バスケットボール部は、選手が主役の「ボトムアップ」を掲げている。2020年にボトムアップ理論を導入してから、2時間と短い練習時間で過去10年の最高成績を記録。今月20日まで行われた東京都新人戦支部大会では、77校中3位に入った。

 

ボトムアップ理論はトップダウンと対極にある考え方で、選手が主体的に動く考え方。トップダウンが指導者から選手へ一方通行の関係なのに対し、トップダウンは指導者と選手に双方向の関係が成り立つ。

 

選手の考えや提案をベースにチームをつくり、指導者と意見交換して双方が納得して同じ方向へ進む。チームのスローガンは「みんなが主役、みんなで成長」。安田学園バスケ部の選手は「選手の学年に関係なく、気付いたことを誰でも発言できる雰囲気をつくっています。何でも『はい』と返事をするのではなく、『いいえ』と言える空気感も大切です」と語った。

 

部活で重視するのは「量より質」。限られた時間を有効利用するため、その日の練習の狙いを全員で共有。練習や試合の様子を動画で撮影し、すぐに課題を話し合う。「計画」、「実行」、「評価」を繰り返し、チーム力を高めている。

 

静岡聖光学院、武田、安田学園は、いずれも中高一貫の私立で、部活動改革による直接的な影響はない。公立中学や高校と比べ、人やお金に恵まれている部分もあるかもしれない。それでも、短い時間を工夫する部活動の取り組みには、競技を問わず参考になる部分が多いはずだ。

 

(間 淳/Jun Aida)

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