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2023/09/06

通園バスに置き去り 3歳の女の子死亡から1年 義務化の安全装置設置率53%

事件が起きた川崎幼稚園の送迎バス

■政府が再発防止策 6月までに安全装置設置完了目指すも…

静岡県牧之原市の認定こども園の通園バスに女の子が置き去りにされて死亡した事件から、9月5日で1年が経った。この事件をきっかけに義務化されたバスの安全装置は、十分に設置が進んでいる状況とは言えない。特に、障がい児支援施設での遅れが目立っている。

 

牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」に通園していた当時3歳の河本千奈ちゃんが通園バスに置き去りにされ、熱中症で死亡した事件から1年が経った。両者で交わした念書の通り廃園を求める遺族側と、希望者がいる限り運営を続けるとする園側の溝は埋まっていない。

 

政府は再発防止を全国の保育施設などに呼びかけ、園児のバス置き去りを防ぐ安全装置の設置を義務付けた。静岡県によると、8月末時点で県内748施設1724台のバスのうち、安全装置の設置が完了しているのは914台と、設置率は53.0%にとどまっている。

 

設置率は公立・私立の幼稚園や特別支援学校など、教育・保育施設が86.5%。児童発達支援センターや指定児童発達支援事業所といった障がい児通所支援事業所は35.6%だった。中でも、政令市を除く県内の放課後等デイサービスは528台のうち安全装置が設置されているのは112台で、設置率は21.2%と極めて低い。

 

政府は今年6月末までに安全装置の設置完了を目指していた。しかし、実際には8月末時点でも完了していない。県は「子どもの安全を確保するため、可能な限り早期の設置率100%を目指し、設置義務化の周知と施設への設置補助金の活用などの支援を実施していく」としている。

 

川勝知事は5日の定例会見で「未就学児の教育・保育施設の送迎用バスの安全管理については、点検指導が徹底されて高い設置率につながっていると評価したい。残念ながら障がい児通所支援事業では設置が3分の1余りで全体の数字に影響している。できる限り早期に設置されるよう、支援に取り組んでいきたい」と述べている。

 

設置が進んでいない理由には、日々の送迎で安全装置をつける時間が限られることや、車両に合った装置の選定に時間がかかっていることなどが挙げられている。つまり、万が一の事態を防ぐ対策よりも、日常業務を優先している現状が浮き彫りとなっている。声を上げるのも難しい幼い子どもの命がなくなってから対策の遅れを後悔しても遅すぎる。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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