2023/09/21
牛と間違えられた!? 静岡の進学校から一般入試で慶大 異色の経歴で大学日本代表監督就任
■函南町出身の堀井哲也氏 韮山高1年秋に左打者に転向
全日本大学野球連盟は、侍ジャパン大学日本代表の新監督に慶応大学の堀井哲也監督が就任すると発表した。静岡県函南町出身の堀井監督は韮山高校から一般入試で慶大に進学。韮山高1年の時に左打者へ転向し、猛練習の末に2年でレギュラーを掴んだ。朝早くからの素振りを日課にし、祖母に牛と間違えられたこともあるという。
堀井監督は九産大の大久保哲也監督からバトンを受け、12月に愛媛県で行われる大学代表候補選手の強化合宿で指導をスタートする。任期は2025年までで、コーチ陣3人の人選も任されている。大学日本代表は来年7月にオランダで予定されているハーレム国際野球大会に出場する。
現在61歳の堀井監督は異色の経歴を持つ。県東部有数の進学校、韮山高1年の秋に左打者に転向した。軟式野球をしていた中学と違い、高校では硬式球を思い通りに飛ばせなかったという。当時は左打者が少なく、「左打ちで飛距離のある打者というだけでアドバンテージがありました」と振り返る。
打撃フォームを固めるため、時間がつくってバットを振った。早朝は自宅前、通学して授業が始まる前の時間、休み時間や部活の後、さらに帰宅後もスイングを繰り返した。
ある冬の日、堀井監督は寒さをしのぐため学生服を着て自宅前で素振りをしていた。すると、祖母が「ギャー」と声を上げた。まだ夜が明けない暗闇の中、上下黒の学生服姿だった堀井監督を牛と間違えたという。積み重ねた努力が実り、堀井監督は2年の夏にレギュラーをつかんだ。
■慶大4年秋にレギュラー獲得 チャンス生かした努力と工夫
高校卒業後は一般入試で慶大に進んだ。野球強豪校から入部した選手も多く、試合に出場する壁は高かった。大学3年時点で公式戦に出場したのは、2年秋と3年春に代打で起用された2打席のみだった。
レギュラーを勝ち取ったのは4年の秋だった。4年春の立大戦に代打で安打を放ち、春季リーグの最終戦となった早慶戦で大学初のスタメンで起用された。第1打席で期待に応える2点タイムリー二塁打を記録。少ないチャンスを確実にものにして、ついに4年秋にレギュラーとなった。堀井監督は「チャンスで結果を出せば、次のチャンスをもらえます。その積み重ねです。チャンスを生かすためには準備や努力が大切になります」と話す。
高校時代に時間があればバットを振っていたように、大学時代は好打者の研究に時間をかけた。授業の合間に東都大学野球のリーグ戦を観戦。ドラフト候補となっていた左打者を観察した。
特に参考にしていたのは、強打者に共通する雰囲気。劣勢の試合展開でもカウントが不利になっても動じない打席で立ち居振る舞いや、ネクストバッターズサークルから打席に向かうまでの堂々とした姿をまねた。堀井監督は「良い打者はチームメートや監督から信頼される雰囲気があると感じました」と振り返る。
慶大卒業後は三菱自動車川崎で野球を続け、現役引退後はJR東日本などで指導者を務めた堀井監督。オリックスや巨人で活躍した谷佳知氏や広島の田中広輔選手ら、多数のプロ野球選手を育てた。2019年12月から指揮する慶大では大学日本一にも輝いている。現役時代は努力と工夫でチャンスをつかみ、指導者としても実績を重ねてきた指揮官は、次のステージで大学世界一を目指す。
(SHIZUOKA Life編集部)