2025/08/09
51年目で初の全国 “小学生の甲子園”出場の静岡県代表 人間力育てる6つの約束事
■静岡市の清水リトルモンキーズ マクドナルド・トーナメント初出場
51年目で悲願を達成した。静岡市で活動する少年野球チーム「清水リトルモンキーズ」は、8月11日に開幕する「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に初出場する。チームでは6つの約束事を決め、メリハリを大切にしてチーム力を向上させている。
マクドナルド・トーナメントで優勝経験も ”少年野球のカリスマ”に中学のラグビー部と剣道部が弟子入り
長い道のりだった。チームを立ち上げて51年目。清水リトルモンキーズは初めて静岡県の頂点に立ち、“小学生の甲子園”と呼ばれる「マクドナルド・トーナメント」出場を決めた。このチームのOBで、チームを率いて12年目を迎えた杉山雄介監督は「チームの歴史にマクドナルド・トーナメント出場が刻まれるのは大きな意義」と喜びをかみしめる。
各支部の代表が全国大会への切符を争う県大会は苦しい戦いの連続だった。初戦は9-1で大勝したものの、2回戦から決勝までの4試合は全て1点差で勝利。決勝戦は1-0の緊迫する展開を制した。
杉山監督は静岡高校から中央大学を経て、36歳まで静岡ガスでプレーした。アマチュア野球界の王道を歩んだ経験と知識のアップデートで、選手の技術を高めている。だが、技術的な指導以上に重視するのが野球に取り組む姿勢だ。清水リトルモンキーズの指揮官に就任後、チームに6つの約束事を設けた。
①大きな声で挨拶、返事をする
②仲間を大切にする
③道具を大切にする
④約束を守る
⑤時間を守る
⑥全力疾走、全力応援

マクドナルド・トーナメント出場を決めた瞬間の清水リトルモンキーズ
■約束を守ってチームを1つに 「勝敗は延長線上」
杉山監督は普段、選手たちにオヤジギャグを飛ばし、雑談で盛り上がる。だが、約束を破った選手には厳しい。自分勝手なプレーをしたり、手を抜いたりした選手は、小学生であっても叱る。
「目標に向かって本気になって取り組める人間になってほしいんです。野球は1人ではできません。仲間のために動けない選手がいるとチームにほころびが生まれてしまいますし、謙虚さやひたむきさを失うと成長が遅くなってしまいます。チームが1つになるために、みんなで約束事を守る。勝ち負けは、その延長線上にあります」
チームの約束事は杉山監督が押し付けるのではなく、選手間で共有し、引き継がれていく。新しくチームに入った選手には、先に入団していた同級生の選手や1学年上の選手が教育係となって、約束事の大切さを伝えるという。
グラウンド内外でメリハリを持って選手と接する杉山監督の考え方は、練習にも表れている。全国大会に出場するチームは週末に朝から夕方まで練習するイメージがあるが、清水リトルモンキーズは土曜日の練習が3時間ほどに限られる。午後3時から夕方にかけて練習し、途中で軽食の時間も30分確保している。杉山監督が理由を明かす。
「ダラダラと丸一日練習しても効果は上がらないと思っています。選手たちは限られた時間で上手くなりたいので、駆け足で動いて準備や片付けも素早く済ませて時間を大切に使います。野球は攻撃も守備も動きや判断のスピードを求められます。普段の練習からスピード感を意識しています」

静岡県大会を制した清水リトルモンキーズ
■歴史に新たな1ページ 12日に初戦で埼玉代表と対戦
動きや判断の速さが習慣化されているからこそ、試合でも発揮できる。6つの約束事も1点を争う厳しい試合でこそ生きてくる。毎年選手が入れ替わる中、清水リトルモンキーズが近年は静岡県内で安定した成績を残し、全国大会出場を果たしたのは、日頃の積み重ねと無縁ではないだろう。
マクドナルド・トーナメントは11日に開幕し、清水リトルモンキーズは12日に初戦で西埼玉少年野球(埼玉代表)と対戦する。「選手たちには、独特の緊張感や華やかな舞台を思う存分感じながらプレーしてほしいです。全国には様々なチームがあるので、選手にとって貴重な機会になると思っています」と杉山監督。清水リトルモンキーズの歴史に新たな1ページを刻む。
(間 淳/Jun Aida)