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2022/11/26

グラブ作りは革の4割を処分 余りを活用したグッズ SDGsで野球の競技人口増加へ

焼津市にあるグラブ・スパイク修理専門店「Re:Birth」の石川さん

■焼津市の修理専門店「Re:Birth」 余った革でグッズ開発・販売

 野球のグラブを作る時、使われる革は全体の6割にすぎないという。残りの4割は処分するのが一般的だ。そんな中、静岡県焼津市のグラブ・スパイク修理専門店「Re:Birth」は、今まで捨てられていた革を活用した野球グッズを開発・販売している。SDGsを推進する取り組みは、結果的に学童野球の子どもたちや保護者、野球人口の増加につながる可能性がある。

 

 2015年に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉は近年、日本でも浸透してきた。17ある世界的目標の中には、限りある資源や自然を守る内容も含まれている。

 

 焼津市にある「Re:Birth」は、全国的にも珍しいスパイクやグラブの修理専門店。手入れや修理で野球用品を長持ちさせる、まさにSDGsの理念に近い仕事と言える。

 

 店主の石川能さんは野球用品店勤務を経て、2019年に独立した。グラブは少年野球用でも1万円を超え、硬式用は5万円以上も少なくない。決して安くない買い物となるだけに、石川さんは「グラブは修理で寿命を延ばせる」と広く知ってもらい、金銭的な負担を減らすと同時に愛着を持ってもらおうとしている。

グラブ作りで余った革を使った守備練習用スリッパ(左)とグラブハング

■強豪の守備練習でも使う守備用スリッパをグラブの革で

 グラブの修理をしていると、野球用品メーカーの担当者と関わりが深くなる。ある日、石川さんは強豪高校の練習でグラブの代わりにスリッパでノックを受けていると知り、グラブをつくる時の余った革を活用できないか考えた。

 

 グラブ製造では、革の約4割は利用できずに捨てられているという。ただ、一部に小さな傷やしわがあって商品にするのが難しいとメーカーが判断するためで、革自体の質は申し分ない。石川さんは余った革をメーカーから安く仕入れ、「守備練習用スリッパ(税込み3900円)」をつくった。

 

「余った革と言っても、品質はしっかりしています。金額的に大きくないかもしれませんが、捨てていたものがお金になればメーカーにメリットがあります。メーカーの収益が増えてグラブの販売価格に反映されれば、結果的にグラブを購入する子どもたちや保護者のためになると思っています」

通気性が良くなり型崩れも防ぐグラブハング

■スリッパ、グラブハング、キーホルダー 革を最後まで活用

「守備練習用スリッパ」に使う紐も、石川さんのグラブ修理で余った紐を活用している。さらに、「守備練習用スリッパ」をつくった後に残った革でグラブを吊るす「グラブハング(税込み2290円)」を開発した。革製品のグラブは湿気で重くなってしまうため、風通しの良い場所に置くのが理想。グラブを吊るして保管すれば、型崩れも防げる。

 

 無駄なく革を使い切るため、最後はキーホルダーをつくる。グラブにしか利用されていなかった革から、様々なアイテムを作り出す「Re-Birth」。野球界でSDGsを体現している。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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