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2023/03/11

難航した取材も… 元ニュースキャスター赤間優美子さん実践 相手の心を開く方法

アナウンサー時代の赤間さんは企画や取材アポから原稿執筆まで担当

■静岡の元アナ赤間優美子さん 企画・取材交渉から原稿執筆まで担当

“話のプロ”アナウンサーの仕事は原稿を読むだけにとどまらない。記者会見場でディレクターが準備した質問を読み上げるだけで、原稿を書いた経験がないアナウンサーも中にはいるが、特に地方局では企画から取材交渉、インタビューや原稿執筆まで担当するのが一般的。VTRの編集をするアナウンサーもいる。静岡のテレビ局でニュースキャスターをしていた赤間優美子さんも、自ら取材して原稿を書いていた。今回のテーマは「相手の心を開く方法」。取材相手の言葉を引き出すため、「自己開示」をしていたという。

 

ニュースキャスターは、1つ1つのニュースを正確に分かりやすく伝える役割があります。そのために、声の質を高めたり、原稿の読み方を工夫したりします。アナウンス技術を高めることに加えて、当事者や関係者に直接話を聞くのも大切です。ニュースの背景や温度感を知れば、ニュアンスをより正確に表現できます。

 

私はニュースには2つの目的があると感じていました。1つは、視聴者が知りたい情報を届けること。例えば、選挙が公示された時、それぞれの候補者はどんな主張をしているのかを有権者の目線で伝える。新しい商業施設ができた時に、どんな特徴があるのか、オープンした背景は何があるのかを伝えるといった種類のニュースです。

 

もう1つは、まだ社会で広く知られていないテーマを取り上げて、問題提起したり、仕組みを変えるきっかけをつくったりすることです。このケースでは、取材対象の方が必ずしも積極的に話をするとは限りません。そもそも、取材は皆さんの好意で成立しています。取材を受ける方には基本的にメリットがない中、時間をつくって報道機関に協力しているわけです。

相手の心を開くことに苦労した取材も

■取材交渉から難航した「不育症」 相手の心を開く自己開示

私は過去に「不育症」の取材をしました。不育症は妊娠しても流産や死産を繰り返す病態です。治療法はありますが、実際に不育症に悩む方々からは、認知度が低いことから「心ない言葉を受ける」、「相談する場がない」といった声が上がっていました。出産と比べて、サポートが不十分だと感じていました。

 

私はニュースの特集で不育症の問題を掘り下げようと考えました。医師や行政から話を聞いて現状を把握してから、不育症に悩む女性への取材を試みます。ただ、取材交渉から難航しました。

 

家族や友達でもない相手、しかもカメラの前で、つらい記憶を思い出して胸中を明かすのに抵抗があるのは当然だと思います。不育症の女性にどんな支援が必要なのかを聞きながら、取材目的を繰り返し説明し、方向性をすり合わせていきます。相手が納得した上で取材に承諾してもらえなければ、お互い不本意な形で放送してしまうからです。

 

実際のインタビューは、当初予定した時間より大幅に長い2時間以上を取ってもらいました。お互いを知る時間が必要なので、カメラを回す前に本題以外の話をする時間が3分の1くらいを占めました。

 

■自分に好意的ではない相手との接し方は?

不育症の女性の苦労を想像した上で取材に臨みましたが、言葉を選びながら話す様子や記憶を辿ることに抵抗を示すような表情からは計り知れないつらさが伝わってきました。本音の半分は胸の中に隠したまま話してもらえなかったと難しさを痛感する取材でした。

 

ハードルの高いテーマを取材する時は特に、私は自己開示するようにしていました。気持ち良く取材するのが目的ではないので、自分の弱い部分を見せて、少しでも相手が話しやすくなるようにします。取材以外でも、周りの人に過去の失敗を明かしたり、不安な気持ちを正直に伝えたりする時があります。自分が心の扉を閉めたままでは、相手が心を開くはずはないと考えたからです。

 

話をしていて、自分に対して好意的ではないと感じる時もあります。それでも、お互いの共通点を探ったり、相手の立場になって考えたりして、「私は、あなたに関心があります」と分かってもらうために言葉や態度で示すと、少なからず思いを受け取ってもらえます。本音を話してもらうのは、どんな仕事にも求められるスキルですし、家族や友人との関係でも必要です。引き出しを増やしていきたいと思います。

 

<プロフィール>

赤間優美子(あかま・ゆみこ)。神戸市出身。2014年に静岡朝日テレビにアナウンサーとして入社、夕方の情報ワイド「とびっきり!しずおか」で気象コーナーを担当。その後は4年間「県内ニュース」のキャスター。事件事故の取材や中継、選挙や台風の特番のMCも務める。また、時事ネタを中心に街頭インタビューで1000人以上の声を聞き、原稿執筆やVTR制作にも従事。そのほか、朝日放送の「朝だ!生です 旅サラダ」の中継コーナー、 静岡朝日テレビ開局40周年記念特別番組「池上彰と学ぶ  なるほど!富士山7つの秘密」などに出演。

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