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2023/06/18

水回りの修理依頼は大変だったけど… 元アナウンサーがインド人から学んだ2つの心

インドでサリーを試着する赤間さん(本人提供)

■静岡の元アナ赤間優美子さん インド生活で価値観変化

異国での生活は、これまでの価値観を変えた。静岡のテレビ局でアナウンサーをしていた赤間優美子さんのコラム、今回のテーマはインド生活で変わった価値観。日本では信じられない出来事に戸惑いや怒りを感じながらも、インド人の許す心と受け入れる心に感銘を受けた。

 

夫の海外赴任が終わり、先日インドから日本に帰国しました。今まで当たり前だった日本の便利な生活にありがたみを感じています。

 

結婚してから間もなく、日本を離れて夫が赴任していたインドへ向かいました。言葉や文化の違いから苦労する部分はあるだろうなと想像していましたが、1年間のインド生活では日本での常識を覆されました。

 

人によって違いがあるという大前提はありますが、インド人の適当さには驚かされることが多かったです。暮らしていた家は水圧が弱かったり水漏れがあったり、水回りのトラブルが頻繁にありました。

赤間さんが1年間生活したインドの街(本人提供)

■業者に修理依頼しても問題解決せず 様子を覗くと…

業者に修理を依頼するのですが、数分で帰ってしまうんです。修理に来てから「必要な道具があるから買いに行って、あす改めて来る」と言われ、翌日に連絡が取れなくなったこともありました。

 

修理を依頼してもトラブルが解決しないので「おかしいな」と思って業者の様子を見ていると、作業した振りだけで何も直していないようでした。作業しても、床をびしょびしょに濡らしたまま帰られた時もありました。相手に任せるだけでは駄目なんだと学び、要望を伝えたり、作業に立ち会ったりするようにしました。

 

秩序のなさにも戸惑いました。スーパーや空港などで列に並んでいる時、少しでも前の人との間隔があると、平然と割り込まれることがあります。そこで隙間を開けずに詰めて並ぶのですが、知らない人と距離が近すぎるのも別のストレスがありました。中には、割り込まれたことに腹を立て、インド人に日本語でまくしたてる日本人もいるようです。

 

インドで暮らしたばかりの頃は、こうした感覚の違いに戸惑いや怒りがありました。日本の当たり前に慣れ、基準が高くなってしまっているからだと思います。私が公用語のヒンディー語を話せず、相手と自由にコミュニケーションが取れないもどかしさもありました。

 

日本の基準で見ると、インド人はいい加減で秩序がないと感じます。でも、とても素直なんです。水道の修理に来たのに作業した振りをして帰ろうとする業者の人に「しっかり見てもらえますか?」と声をかけると、手を抜かずに修理してくれます。列に割り込んだ人に「並んでいます」と伝えると、「ごめん」と答えて列の後ろに回ります。

インドでの一般的な食事(本人提供)

■日本では“非常識” インドには許す文化と受け入れる文化

インド人には悪意があるわけではなく、相手が何も言ってこなければ問題ないという感覚なんです。インド人は列に割り込まれても「急いでいるなら、先にどうぞ」と考え、人を許す寛容な文化なんだと思います。

 

「許す文化」に加えて、インドには「受け入れる文化」もあると感じました。日本人だからという差別は一度も受けませんでしたし、見知らぬインド人に「日本人ですか?」と声をかけられて、「日本のアニメが好きなのでインドで会えてうれしい」と言われたこともあります。

 

日本に帰国する前には、夫の会社の送別会に私も招かれました。集まった50人くらいのインド人は全員が初対面でしたが、誰もが気軽に声をかけてくれたので、私は自然と輪の中に入れました。

 

音楽を流しながら踊って、今この時を楽しもうとする気持ちが伝わってきました。私も「何で座ってるの?一緒に踊ろう」と誘われて、踊りました。日本では恥ずかしさが先行してためらってしまいますが、踊ったら気持ち良くなりました。

 

同世代の日本人であっても、考え方や価値観は違います。異国なら、その違いが大きくなるのは当然だと思います。自分の価値観だけで物事を見ると、チャンスや可能性を狭めてしまうと感じました。水漏れに悩まされたり、水が合わずにお腹を壊したりする苦労はありましたが、インドで暮らした1年間は考え方や生き方を見つめ直す貴重な時間になりました。

 

<プロフィール>

赤間優美子(あかま・ゆみこ)。神戸市出身。2014年に静岡朝日テレビにアナウンサーとして入社、夕方の情報ワイド「とびっきり!しずおか」で気象コーナーを担当。その後は4年間「県内ニュース」のキャスター。事件事故の取材や中継、選挙や台風の特番のMCも務める。また、時事ネタを中心に街頭インタビューで1000人以上の声を聞き、原稿執筆やVTR制作にも従事。そのほか、朝日放送の「朝だ!生です 旅サラダ」の中継コーナー、 静岡朝日テレビ開局40周年記念特別番組「池上彰と学ぶ  なるほど!富士山7つの秘密」などに出演。

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