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2023/07/03

経営危機から起死回生の一手 逆転の発想で大ヒット商品誕生 新型コロナで需要拡大

新橋製紙が製造・販売する「ニューチェリー」

■ペーパータオルの常識覆した 新橋製紙の「ニューチェリー」

日本で初めて現在の規格のトイレットペーパーを生産した静岡県富士市の製紙会社「新橋製紙」は、ペーパータオルも国内で最初に開発している。ただ、一時は価格競争により売上が伸びず、製造を中止する直前に追い込まれた。危機を乗り越えたのは、業界の常識を覆した薄型のペーパータオル。ここ数年は新型コロナウイルス感染拡大により医療現場で重宝され、日本を代表する病院からは直々に「商品を切らさないでほしい」と連絡がきたという。

 

今から20年ほど前、新橋製紙は経営危機に直面していた。地方の取引先の衰退や、大手製紙メーカーの増産などにより、売上を伸ばせずにいた。年商は現在の約3分の1となる10億円前後で停滞していた。

 

特に深刻だったのはペーパータオルの不調だった。新橋製紙は国内で初めてペーパータオルの開発に成功し、1954年から販売を開始している。しかし、大量に生産して安く販売する大手メーカーとの価格競争が激化し、中小企業の新橋製紙は苦戦を強いられた。社内からは、こんな声が漏れていた。

 

「もうペーパータオルの製造は中止した方が良いのではないか」。

 

この声に対し、当時の社長(現在の会長)は訴えた。「製造をやめる前に、最後に俺がつくりたいものを世に出したい」。発案したのが業界の常識を覆す薄いペーパータオル「ニューチェリー」だった。佐竹義史常務は、こう話す。

富士市にある新橋製紙から望む富士山

■大手メーカーにはできない品質 薄さと吸水性を両立

「当時は、どのメーカーもペーパータオルは1枚で拭くことを前提にしていたので、厚みのある商品ばかりでした。ただ、ペーパータオルは厚くてもクセで2枚取る人が多かったんです。薄いと使い過ぎるトイレットペーパーとは逆のロジックです。それなら、1枚を薄くしようというのが現会長の発想でした」

 

薄くても吸水力があって拭き心地が良い「ニューチェリー」は爆発的なヒットとなった。当時は中国でSARSや新型インフルエンザが流行し、厚生労働省が医療機関で布タオルを使用しないようガイドラインを定めたタイミングとも重なった。国内で一気にペーパータオルの需要が高まった。

 

「ニューチェリー」の後を追うように、大手メーカーも薄さを追求した。ただ、薄さと吸水力の両立では、新橋製紙に分があった。佐竹常務は「大手メーカーは量産するために機械のスピードを上げざるを得ません。そうすると、薄くしようとした時にペーパータオルが切れてしまいます」と説明する。

 

「ニューチェリー」は業界の常識を変え、新橋製紙の危機を救った。ここ数年は新型コロナ感染拡大により衛生管理への意識が高まり、需要が大きく伸びている。特に、医療現場からの信頼は厚い。コロナ病棟で患者を受け入れていた日本を代表する病院からは「医療現場の根幹になるから、ペーパータオルを切らさないでほしい」と会社に直接連絡がきたという。

 

土壇場での最後の一手でV字回復に成功した新橋製紙。中小企業だからこその戦い方がある。

 

(間 淳/Jun Aida

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