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2024/01/12

ハヤテ223サポートする静岡市 使命感と限界の狭間 最も難しいのは「バランス」

ハヤテ223は11日に清水庵原球場で合同練習スタート

317日に開幕 急ピッチで本拠地・庵原球場の整備

ハードルを1つクリアすると、次のハードルに直面する。静岡県初となるプロ野球の球団創設に大きな期待を抱きながら、ハヤテ223を支援する静岡市は約2か月後に迫ったウエスタン・リーグの開幕に向けて急ピッチで準備を進めている。市にとって最も難しいのは「バランス」だという。

 

昨年11月22日のプロ野球オーナー会議でハヤテ223の参加が正式に認められて1か月半。ハヤテ223が本拠地を置く静岡市では喜びに浸る間もなく、今年3月17日のウエスタン・リーグ開幕を滞りなく迎えられるように1つ1つの課題に取り組んでいる。

 

まずは、市が保有し、ハヤテ223の本拠地となる清水庵原球場の整備。昨年12月13日に閉会した静岡市議会で球場の改修費3000万円を含む補正予算案が可決されたことを受け、業者選定に入って今月にも工事を進める予定だ。

 

球場整備は主に3つの工事を行う。1つ目は内野スタンドの防球ネットのかさ上げ。現在の2メートルの高さではプロが放ったライナー性の打球がスタンド上部に座る観客に直撃して怪我につながる危険性があるため、3.5メートルまで上げる。

 

2つ目は、球場三塁側敷地外の防球フェンス設置。三塁側スタンドのすぐ横には公道があり、プロの打球であればスタンドを越えて公道まで飛ぶ可能性がある。歩行者や車に打球が当たらないように、長さ70メートル、高さ4メートルのフェンスを新設する。

 

3つ目は外野のラバーフェンスの補修。一部が剥がれたり、穴が開いたりしているため、選手が怪我をする恐れがある。この3つはハヤテ223のウエスタン・リーグ参加決定に伴ってNPB(日本野球機構)から指摘された内容のため、市は最優先で整備を進める。

ハヤテ223が本拠地とする静岡市の清水庵原球場

■市民の利用確保や他のプロスポーツとの公平性 「バランス重要」

静岡市はハヤテ223のサポートに全力を注ぐ考えを示している。プロ野球の球団創設を掲げた田辺信宏前市長も、バトンを引き継いだ難波喬司現市長も全面支援する意向を表明している。ただ、市はハヤテ223の希望を全て受け入れられるわけではない。プロ野球球団連携推進室の山野井伸吾室長が説明する。

 

「清水庵原球場に関しては、市民の皆さんの利用も確保する必要があります。ハード面の整備費の一部も皆さんからお預かりした税金を財源としています。静岡市を本拠地とする他のプロスポーツチームとの公平性もあります。ハヤテ球団を全力でサポートしますが、全てにおいてバランスが重要で、最も難しさを感じている部分です。様々な条件がある中で、市としてできること、すべきことをハヤテさんと確認しながら進めています」

 

静岡市が最も苦労しているのは「バランス」。ハヤテ223が本拠地とする清水庵原球場1つとっても、高校野球をはじめとする地元の大会や交流の場となっている。特定の団体が独占するわけにはいかない。

 

ただ、ウエスタン・リーグでは年間70試合のホームゲームが開催され、ハヤテ223はそのうち50試合程度を清水庵原球場で実施する見込みとなっている。結果として、例年実施している市民による大会やイベントの時期をずらしたり、別の会場に移したりする調整も想定される。山野井室長は、こう話す。

 

「市民の皆さんの希望とウエスタン・リーグの試合が重なる可能性があります。地元の方々が大切にしている大会やイベントを大事にしたい気持ちは市もハヤテさんも同じですが、日によってはウエスタン・リーグのホームゲームに譲っていただきたいとお願いすることもあると考えています」

11日の合同練習を見学する山野井室長

■「1つハードルを越えても、次のハードル」

清水庵原球場は市が保有しているものの、球場利用者を決めるのは指定管理者の静岡スポーツスクエア共同事業体となっている。市とハヤテ223は指定管理者とともに、地元野球団体と話し合いをしていくことになる。

 

そして、ハヤテ223が清水庵原球場を利用する上で最も大切なのは市民の協力と言える。市とハヤテ223は、これまでに地元住民や関係者と計6回の意見交換会を実施してきた。ハヤテ223は、ウエスタン・リーグの公式戦開催に利用日数の確保が必要であること。仮に市民が清水庵原球場で野球をする機会が減ったとしても、プロ野球を観る機会の創出や野球教室の開催などで新たな価値をつくり出すことができると説明し、理解を得たという。

 

プロ野球の試合開催で懸念されている球場周辺の渋滞についても、ハヤテ223は臨時駐車場の設置やシャトルバスの運行で対応する計画を説明した。市は同じ清水区に本拠地スタジアムを置くプロサッカーチームの清水エスパルスを参考に、迷惑駐車や騒音の問題が起きないようハヤテ223と連携していくという。

 

ハヤテ223は1月25日に清水庵原球場で春季キャンプを実施し、3月のリーグ開幕へ向かう。時間とも戦っている山野井室長は「1つハードルを越えても、次のハードルがあります。ずっと課題が続くので安心感はありません」と話す。静岡県初のプロ野球球団は地域に根付くのか。ハヤテ223と市民の懸け橋となる静岡市がカギを握っている。

 

(間 淳/Jun Aida

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