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2024/03/02

サッカー選手の家族は避けられない移籍の悩み 元アナウンサーの妻も葛藤

2018年に広瀬さんは河井選手と結婚(本人提供)

■広瀬麻知子さんの夫 河井陽介選手は今季からカターレ富山

悩んだ末に選んだのは家族が離れて暮らす生活だった。静岡朝日テレビの元アナウンサー広瀬麻知子さんのコラム「広瀬奮闘中」、今回のテーマは「サッカー選手の妻」。広瀬さんの夫、河井陽介選手は今シーズンからJ3のカターレ富山でプレーする。プロスポーツ選手が避けて通れない移籍は、家族も決断を迫られる。

 

今シーズンのJリーグが開幕しました。私の夫はファジアーノ岡山からカターレ富山へ移籍して1年目のシーズンになります。清水エスパルスでプロのキャリアをスタートして、3つ目のクラブです。

 

私はスポーツに詳しくはありませんが、夫と結婚した時から常に移籍は頭の中にあります。エスパルスからファジアーノに移籍した時は家族で静岡から岡山へ引っ越しました。結婚した時に「夫がどこのチームでプレーすることになっても、家族一緒にいたい」と考えていたので、迷いはありませんでした。

 

ただ、今回は事情が違いました。長男は昨年4月から幼稚園に通っていて、お友達がたくさんできました。夫は今、34歳です。サッカー選手としては1年1年が勝負になる年齢で、エスパルスの時のように1つのチームで長くプレーするのは難しいと思っています。

 

そうなれば、長男は毎年のように転園や転校する可能性があります。今年8月で2歳になる長女も数年後には園児になります。家族で富山に引っ越すのか、夫だけ単身で別々に暮らすのか。夫婦で何度も話し合い、ギリギリまで悩みました。

 

■転園や転校の連続は子どもたちが… 家族別々の生活選択

出した答えは、別々の生活です。転園や転校を繰り返すと子どもたちがかわいそうという気持ちが強く、夫に単身で富山に行ってもらうことにしました。私は千葉で生まれ育ったので、親しみのある関東で子どもたちと暮らします。時間がある時は夫が私たちのところへ来て、それ以外は可能な限り私たちがホームもアウェーも応援に行きます。

 

移籍はプロスポーツ選手の家族であれば、大半が通る道です。ファジアーノの退団が決まってから、家族で静岡を訪れる機会がありました。夫がエスパルスに所属していた頃から親交のある選手やクラブスタッフのご家族と会って、夫の移籍先について相談しました。

 

それぞれのご夫婦から単身の経験談を伺いましたが、「どちらが良いという答えはないよ」、「決めるのは自分たち自身」とアドバイスされました。実際に単身を経験した奥さまは「夫がいなくても意外と大丈夫」と話していました。それぞれの家族に選択があり、正解はないのだと思います。

 

「単身か、家族一緒か」という悩み以前に、夫はファジアーノを退団するタイミングで「現役を続けるか、引退して家族と一緒に暮らすか」を考えていたみたいです。夫は考え事や悩み事を家庭に持ち込まないタイプです。練習後や試合後、1人で車を運転しながら頭や心を整理しています。

現在は2人の子どもを育てる広瀬さんと河井選手

■サッカーに入り込まないスタンス「私たちにはベスト」

私も夫の仕事には入り込まないようにしています。試合で負けた時や怪我をした時は一緒に落ち込まず、明るく接しています。その方が気持ちを切り替えやすいと、結婚前に夫が話していたからです。サッカー選手の妻として正解なのか分かりませんが、私たち夫婦にはベストな形だと思っています。

 

パパっこの長男は、夫がサッカー選手だと理解しています。Jリーグの選手名鑑がお気に入りで、エンブレムやユニホームを見ると、どこのチームなのか覚えています。夫にとって、子どもたちの存在は現役を続けるモチベーションになっています。

 

昨シーズン、ファジアーノはプレーオフ進出を逃してしまったので、長いオフになりました。私は移籍先に無関心を装いましたが、夫のスマートフォンが鳴るたびに「代理人からの電話かな」とドキドキしていました。

 

矛盾しているかもしれませんが、夫には何でも相談してほしい気持ちがありながら、私からは聞き過ぎないスタンスで接していました。「1人で悩まないで」と伝えていましたし、夫が考え込んでいる様子の時は「今夜、話そうか」と声を掛けて話を聞いていました。

 

家族で一緒に生活できないのは寂しいです。でも、長い人生で見れば夫が子どもたちと離れる期間は長くありませんし、別々に暮らしても心が離れるわけではありません。怪我でプレーできなくなるのは仕方ありませんが、体が動いて必要としてもらえるチームがある限りは現役を続けないと後悔すると思います。私たちの家族なりの形で、夫をサポートするつもりです。皆さん、カターレ富山・河井陽介の応援よろしくお願いいたします。

 

<プロフィール>

広瀬麻知子(ひろせ・まちこ)。千葉県我孫子市出身。2010年に静岡朝日テレビにアナウンサーとして入社し、1年目から「ピエール瀧のしょんないTV」を担当。その後、情報番組のMCや県内ニュースのキャスターを務め、20203月付で退社した。2018年に当時清水エスパルスでプレーしていた河井陽介選手と結婚。現在2児の母。

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